2ntブログ



新たな始まり (5) 

デニスの声は、大学入学予定の日の2日前に変化し、結果として、彼の年齢の女の子たちの声に似た声になった。加えて、彼は母親の衣類を時々くすね始めていた。たいていは、ジーンズやTシャツやショートパンツだった。その衣類は彼にはちょっと大きすぎだったが、自分の服よりは、はるかにフィットしたものだった。

服については安心したとはいえ、登録すべき日、学生寮に着いた時も、彼は打ちひしがれている様子だった。しかしながら、彼は自分よりひどい状態の人たちもたくさん見ていた。みなが身体のサイズよりも何倍も大きすぎる服を着ていた。

デニスは寮の入り口に立っていた女性に近づき、「寮の登録に来ました」と伝え、自分の名前を告げた。

その女性は手に持っていたリストを調べた。

「あら、掲示を見ていなかったの? あなたのような男子は女子と一緒にまとめられることになったの。セクハラの事件が何件かあったのよ。あなたたちを他の男子と一緒に住まわせて、その可能性を認めるわけにはいかないので」

デニスはちょっと驚いたが、何も言わなかった。その女性はデニスに新しい寮への配置を伝え、彼はその指示に従って、道を進んだ。

そこはひどく離れているわけではなかったし、デニスも速足で向かった。少なくとも、デニスは他の学生のようにたくさんの荷物を持っているわけではなかった(彼の荷物はスーツケース2個だけだった)。だが、歩く途中、彼は、将来のクラスメイトになる人たちを見る機会を得ることができた。

見まわしながら、非常に奇妙な感じになった。フィットした服を着ていた白人の男子学生はごくわずかで、皆、着心地が悪そうな服を着ていた。ダブダブの服でぞろぞろ歩いている。だが、異和感の原因はそれに限定できると言えたかと言うと、そうは言えない。白人の男子学生と女子とを分けるのは、むしろ、胸のところだった。みな、女子と違って胸が平らだった。それにより白人の男子と白人の女子との見分けが簡単についた。

寮に着いたが、部屋の割り当てを受ける行列に並ばなければならなかった。おおよそ30分待った後、自分の新しい部屋の前に立った。だが、どこか入るのを躊躇っていた。新しいルームメイトに何て言おう? 自分のことを気に入ってくれるだろうか? 自分もその人たちが気に入るだろうか? その人も自分と同じような男の子なのだろうか? ひょっとして女の子がルームメイトなのだろうか?

デニスは深呼吸をして、ドアを開けた。

部屋の中は空だった。デニスはちょっと心が沈んだ。自分は独り部屋をあてがわれたのだろうか? それは、それでそんなにひどいとも言えないのでは? 確かに、友だちを見つけ、ルームメイトと楽しく暇をつぶすといった学生生活を夢見ていた。だが、たった独りで生活するというのは、故郷に残してきた生活とたいして違わない。それはそれで悪くない。

デニスはベッドの上にスーツケースを置き、衣類を取り出し始めた。みな、サイズが合わない衣類だった。

2分ほどした頃、ドアが開き、デニスは顔を上げた。ドアのところには、ブロンド髪の小柄な白人女性が立っていた。身体のサイズはデニスと同じくらいだが、どこを見ても女性であった。胸は巨大とは言えないが、はっきり存在していると分かるし、張りがある感じに隆起していた。その子はにっこり笑っていた。

「ハイ、あたし、アンバーというの」

「僕はデニス」

「ママ? パパ? こっちよ!」 

彼女は廊下の方に呼びかけた。そのすぐ後に、アンバーの後ろにふたりの人物が姿を見せた。どちらも背が高いわけではないが、片方は明らかに女性化した彼女の父親であり、もう一方は母親であると分かる。アンバーは両親にデニスを紹介した。彼女の両親は、荷物を部屋に持ちこんだ後、さようならと言って立ち去った。

アンバーは、両親が帰っていった後、デニスに問いかけた。

「どうやら、フィットする服を探すのにちょっと苦労してるみたいね?」

彼女はくすくす笑ったが、悪意のある笑いではなかった。純粋に陽気な笑いであり、デニスの緊張感をほぐす笑いだった。

「そう。これは僕の母親の服。経済的に苦しくて、新しい服を買えないから……」

「分かるわ。うちのパパも似た問題を抱えていたから。もし、よかったら、あたしの服を貸してあげてもいいわよ。あたしたち同じサイズのようだから」

デニスは唖然とした。彼は、これまでの人生で、こういった親切をしてもらったことが一度もなかった。彼が育った所では、いかなる形であれ、彼に手助けを提供する者は誰もいないだろう。少なくとも、何か隠れた動機もなしに親切に振る舞う人など誰もいないことは確かだ。

デニスはどうしても訊かざるを得なかった。「どうして、僕に親切を?」

アンバーはその質問に心から驚いた様子だった。「どういう意味?」

「僕たちは会ったばっかりで、君は僕を知らないのに。なのに、どうして僕に親切にするの?……いや、別に迷惑に思ってるわけじゃないんだ。本当に感謝してるんだ。ただ、何と言うか……僕の経験では、親切というのは、こんなふうにされることじゃなかったので……」

アンバーは顔をそむけ、ちょっとの間、沈黙した。そして再びデニスに顔を向けた。その時、デニスはアンバーの瞳に心から心配する表情が浮かんでるのを見た。その表情が正確にどのような表情か、あるいは、どうして彼がアンバーを信頼したかを説明することはできないだろうが、その表情を見たのは確かだった。

「ああ、本当に悲しいことね。あなたたち…あなたたちボイにとってどれだけ大変か分かるつもりよ。あたしのパパも同じことを経験したから。それほど大きな変化何だもの。だから、あなたが直面している困難なことのリストに、サイズの合わない服をつけ加えるべきじゃないと。そう思っただけなの」

デニスはアンバーの申し出を感謝したし、喜んで受けたいと思った。しかし、このような親切をしてもらった経験がないということは、とりもなおさず、どのように反応してよいか分からないということを意味する。そこで、彼は自分に言える唯一の言葉を述べた。

「どうも」

アンバーはにっこり笑った。

「じゃあ、あなたに似合う服があるかどうか見てみましょう?」と早速、バッグのひとつを開け、中から衣類を出し始めた。デニスは、どうしてよいか分からず、横に突っ立ったままでいた。それを見て、アンバーが言った。

「うふふ。服を脱いで、おばかさん」

デニスはためらった。そしてアンバーが言った。

「恥ずかしがっても意味がないわよ。あたしが、服を着てないあなたを見るのは、これが最後じゃなさそうなんだから。なんだかんだ言っても、あたしたちルームメイトなんだし」

と彼女は再びバッグの中を漁り始めた。

デニスはどうしてよいか分からなかった。一方では、彼は自分の身体に、いまだに馴染んではいない。他方、彼は、新しい友だちになって欲しいと思っている人をがっかりさせたり、傷つけたりするのは望んでいなかった。結局、彼の孤独は嫌だという思いの方が勝ちを収め、シャツを脱ぎ始めた。次にズボンも。そして、デニスは極度にだぶだぶのトランクスひとつの格好で突っ立って、アンバーが服を出すのを待っていた。

「この服の中にソレを着るの? それはありえないわね。服の下でごわごわに丸まってしまうもの」

そう言ってアンバーは手を伸ばし、彼のトランクスを引き降ろした。その何気ない手つきに、デニスは、彼女が彼を女の子のように考えており、まったく害をなすつもりがないことが分かった。

アンバーは彼にピンクのパンティを放り投げた。「それを履いて」

言われた通りにしたら、驚くほど身体にフィットするのを感じた。股間にペニスの盛り上がりができたが、小さすぎてほとんど気にならない。


[2015/08/10] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する