もう一度だけクリスティに目配せして、外に出ても大丈夫か確認した後、ドアを開けた・薄暗い廊下に出るとすぐに、出口のそばに、例のふたりの男がいて、あたしたちを見ているのに気がついた。さっきと同じふたりだけど、表情がまるで変わっていた。まるで、街角に立っている安い娼婦を見るような顔で、ニヤニヤしながらあたしたちを見ている。上下に視線を走らせ、あたしたちの身体を見ていた。
「これまでで最高のフェラだったぜ。ありがとよ!」 背の高い男があたしを見て言った。
ふたりともあたしたちの方に近づいてきた。あたしたちの行く手をブロックするかのように廊下を塞ぎながら。あたしはちょっと不安になってきて、ふたりから目を離さないまま、クリスティの手を握った。
「お礼はいいわ。ちょっといいかしら……」 と言い、この場から出ようとした。
「あんたと娘さんは、こういうことをしょっちゅうヤッテるのか?」
ふたりはあたしたちのすぐ前に立ちふさがった。あたしとクリスティは本能的に後ずさりした。ふたりとも背中が廊下の壁についていた。
「あたしたちが何をしようと、あなたたちには関係ないでしょ!」と、あたし。
クリスティはあたしの腕にしがみついている。明らかに男たちを怖がっている様子。あたしは落ち着いて、毅然とした態度を取っているように見えるよう、精一杯、頑張っていた。
「ほほー! だけどよ、あんたとあんたの可愛いお譲ちゃんは、あそこで俺たちのちんぽをしゃぶったんだぜ? 関係ねえわけがねえだろ! さあ、あんたたちふたりとも、仕事をフィニッシュしなくちゃいけねえと思うぜ。淫売にふさわしく、今度は一滴残らず飲み下して欲しいね」
背の高い男は自信満々のオーラを放っていた。一方の背の低い方は、一言も言わなかった。
この男、娘の前だというのに、よくもあたしのことをそんなふうに言える! 男の言ったことに怒ってはいたけど、内心は怖がっていたのは認めざるを得ない。あのフランクがストリップ・クラブであたしに迫った時のように怖かった。諦めなくちゃいけないの? そんな気持ちが心の中に忍び込んできて、身体が凍ってしまい動けない。
「お願い、トラブルは嫌なの。あたしたちを行かせて!」
「そうして、最高のフェラを逃すって? おまえ、バカか? ごちゃごちゃ言わず、そこにひざまずいて、ちんぽを吸えよ!」
と男あズボンに手をかけた。中から出そうとしている。
その時、「おい、そこで何やってる!」と、どこからともなく声が聞こえた。
ふたりのバカ男の向こうに目をやると、廊下の入り口に人が立っているのが見えた。
「な、何でもないんだ。カウンターに戻っていいよ。問題ないから!」 と背の高い男が返事した。
もう一人の背の低い男は、ちょっと不安になっている様子で、きょろきょろと視線を相棒と、入口に立つ人影に行ったり来たりさせた。
「あたしたち、このふたりに脅かされているの! お願い、あたしたちを助けて!」 あたしはできる限りの大声で叫んだ。
すると、ふたりの卑劣男は、一歩、後ずさりした。向こうに立つ人影はどんどん大きくなり、はっきりと姿が見えた。
何と、ヒスパニック系の女性だった。肩までの長さの黒髪で、110センチはありそうなEカップの胸。身体にぴっちりのTシャツを着てて、その中にある大きなニップル・リングの輪郭が浮き出ている……。この人は、ベティだわ! 彼女を見て息が止まりそうになった。こんなことって信じられない! 本当に、あのベティ! バス停にいた可愛い女の子!
「あんたたち、このふたりを脅かしてるって?」 ベティはふたりの卑劣漢を睨みながら、まるで歌うように節をつけて言った。
「いや、俺たちは、ただ遊んでいただけさ。楽しんでいたんだよ」
ベティがあたしたちを見た。彼女の黒い瞳と目が会い、あたしは心臓がちょっと高鳴るのを感じた。彼女はしばらくあたしを見つめていて、唇にかすかに笑みが浮かべたようだった。それからクリスティにも目をやった。ベティは、あたしたちが恐怖に顔をひきつらせているのを認識したと思う。でも、それより、何より……彼女、あたしのことを分かったみたい。そんな感触があった。
「あなたたち、私が警察を呼ぶ前に、この店から出た方がいいわよ!」 きっぱり自信を持った声でベティは言った。
彼女が、この種のトラブルを扱いなれているのは一目瞭然だった。
「分かった、分かったよ。トラブルはごめんだ。おい、ジェイク、行こうぜ」 と背の高い男は言い、ふたりはあたしたちを睨みつけながら、向こうに立ち去った。