せっかく声を出さないようにと頑張ったのに、揉むたびに、喉の奥から、ぐぐぐっと声が聞こえてくる。揉むたびに、クリトリスを濡れた舌で舐められているような感じがした(実際はそういう経験がないから、その感覚をしらないけど、自分で自分を慰める時、指を濡らしてする経験から、そんな感じじゃないのかなって想像した)。
次に揉んだら、もうまともに立っていられなくなって、キッチンのカウンタに覆いかぶさるようになっていた。呼吸も浅く、ハアハア途切れ途切れになっていた。全身の神経がビンビン反応している。
もう中毒みたいに、何度も何度も繰り返し揉んだ。そのたびに、両足のつま先が、キューっと内側に反り、息づかいが乱れ、そして、感覚がどんどん高まっていく。もう一度、揉んだ。……でも、今度は何も起きない。
すぐに左の乳房に目をやった。乳首にミルクの滴が一滴くっついているけど、もう、その乳房は張った感じがしなくなっていた。
カップを見たら、350ミリリットルくらい溜まっていた。エクスタシー感が急速にしぼんでいく。でも、右側の乳房はまだ痛みがある。中腰のまま、すぐに右のおっぱいがカップの上に来るよう姿勢を変え、そして揉んだ。
「ホーリイ・ファック(すごく感じる)!」
喘ぎ声を出したけど、そんな言葉で言ったか分からない。あふぁ、ふぁ、くっ!って言葉ないならない喘ぎ声だったのかもしれない。音が似てるだけの、何か根源的な唸り声みたいな感じ。
ともかく、快感は麻痺して鈍くなっていくどころか、ますます強烈になっていくばかりだった。放り投げるように頭を後ろに倒し、胸を前に突き出す形になって、何度も何度も右の乳房を絞り続けた。ぎゅっと握るたびに、ビュッ、ビュッとミルクが出て、同時に、全身に強烈な快感の電流が走る。
右側のおっぱい、最初の3回くらい握った後は、握るたびに快感がずんずん加算されていくように感じた。こんな感覚、信じられない。オナニーは何度もしたことがあったけど、こんなのは初めて。
揉めば揉むほど、そこに近づいていく。全身がぶるぶる震えていたし、乳房を握る指にも力が入らなくなっていった。もう、力尽きてしまうかもと思い、最後に思い切り強く握った。乳首からミルクが勢いよく噴射するのを感じた。
「ああ、すごい!」
大きな声で叫んだ。ウェンディに聞かれても構わないと思った。
全身にオーガズムが大波のように打ち寄せる。こんなオーガズムは初めて。たいていのオーガズムのようにクリトリスからゆっくりと高まってくるような絶頂感とは違って、
胸と股間のあそこのふたつから同時に噴き出してくるように感じた。
衝撃、圧倒的で純粋な衝撃! それが両脚、胴体、そして身体のすべての他の部分を、同時に駆け巡る。
快感はあらゆる方向に動きまわり、あたしは自分の中心がどこにあるかも忘れ、完全にリラックスし、そして、どこか高揚した気持ちになった。その変化が同時に起きる。意識は身体の中だけになり、身体の外のことについては、聴覚も、味覚も、触覚も、嗅覚も、視覚も消えていた。全身が快感が充満したカタマリになっていた。
永遠に続くかと思ったそれも、ようやく、落ちついてきて、オーガズムがゆっくりと鎮まってきた。意識が戻り、キッチンで上半身裸のまま立っている自分に気づいた。ちょっとおどおどして、混乱してる感じで突っ立っている。
2分ほど立ったまま、息づかいが元に戻るのを待って、いまの快感が何だったのか、理解しようとした。何が起きたんだろう? ミルクを出すたび、いつも、いまのようなことが起きるの? それに、あたしが出したミルクは?
カウンタの上のカップに目をやった。さっきの不思議なオーガズムについては、あまり重要でなくなっていた。オーガズムが去り、呼吸も元に戻ると、オーガズムより、あたしの乳房と、その乳房の不思議な性質の方が、もっと興味深くなっていた。
うつむいて胸を見た。無意識に強く握っていたので、ちょっと赤くなっているけど、リリスが受け合っていたように、相変わらず、ツンと張って、重量感たっぷりの形。もはや、張りの痛みはなくなっていた。
カップの容器は透明だった(あちこちにフットボールのロゴが塗られているけど)。中には、青みがかった白い液体が溜まっていた。
カップを一回まわしてみると、ミルクがちゃぷちゃぷと波立った。(水よりはずっと濃いけど)普通の牛乳よりは薄い感じ。スキムミルクのような感じかもしれない。たくさん溜まっていて、リリスが言ったように700ミリリットルは確実にある。
カップを鼻先に近づけ、匂いを嗅いでみた。どんな匂いがするか予想していたわけじゃないけど、うっすら、美味しそうな香りがした。ちょっと甘くてクリーミーな匂い。実際、飲みたいと思わせるような匂いだった。急に、どうしても味わってみたい気持ちが高まってきて、あたしはカップを口に寄せ、傾けた……。
「だから、あたし、こう言ったのよ……」
玄関が開く音がし、ウェンディの大きな声が聞こえた。声の様子から、連れの人も家に入ってくると分かった。かっと熱いパニック感が全身を走った。さっきのオーガズムで道を切り開かれたのか、さっきと同じ感覚経路を今度はパニック感が走る。
急いでカップをカウンターに置き、放り投げたTシャツを探した。床に落ちてたのを見つけ、急いで頭からかぶる。シャツの裾を整えている時、ウェンディがキッチンに入ってきた。
「だからね、あたし、まるで……」
ウェンディは後ろからついてくる友だちに話していた。女の子がもうひとり、それに男の人が4人くらいいるようだった。みんな、ウェンディの話しをうんうんと頷いて聞いている。
全員が入ってきたのを知り、あたしは冷蔵庫を背に縮こまった。できるだけ目立たない、小さな存在に見せようとして。
「あ、ハイ、ラリッサ!」
ウェンディは、立っているあたしに気づくと、可愛い声であたしに呼びかけた。
「ようやく起きたのね。気にしないでくれるといいんだけど、テレビで試合を見ようと何人か連れてきたの」
突然、全員の目があたしに向けられた。今は自慢の美しい乳房があるのに、あたしはみんなの視線が気になった。多分、以前よりも、人の視線が嫌と感じていたかも。胸の前で両腕を組んで、顔を赤らめた。
「いいえ、いいわよ」
男子学生たちは、ちょっとあたしのことを振り返りながらリビングに入って行った。彼らの視線があたしの胸に向けられるのを感じた。
「あ、あと、こちらはジーナ。あたしの友だち」
ウェンディはもう一人の女の子の方を指さして言った。「彼女、あたしの地元の友だちなの。来週にかけて家にステイしてもらうつもり? 彼女の大学は休みなんだって。いいわよね?」
「ハーイ、会えて嬉しいわ」 とジーナは手を差し出した。あたしは胸の前で組んでいた手の片方を出して、彼女と握手した。心臓がドキドキする。ウェンディの友だちと会うといつもそうなるのだけど、この時も、いつもと同じ人づきあいの不安を感じた。いや、別にウェンディの友だちに限らず、誰とでもそうなるんだけど。
でも、これが理由で、あたしは立派な胸が欲しいと思ったんじゃないの? 胸が大きくなったら自信が持てると思ったのでは? でも、思ったようには、なっていない。
「あたしも会えて嬉しいわ」 とあたしは小さな声で早口で言い、また顔を赤くした。