上下の唇で強く挟んで、口を掃除機のようにして吸いこんだ。そうすると、前にした時と同じ強烈な解放感が襲ってくる。でも、今回は前よりもスゴイ。ミルクが強い噴流となって出てくる。前にした時に一番強く絞った時よりも、強い噴流。ビュビュッと口の中に飛んできて、中で砕ける感じ。
最初に感じたのは鼻孔に広がる香りだった。フルーティと言ってもよいような香り。次に、口の中が液体でいっぱいになってきて、ほっぺたが膨らんでくる感じがした。口の中で舌を回して、味わってみる。前にうっすら感じた、超甘いメロンの味がする。でも今回は量的に圧倒的。舌全体がそれに包まれ、その後、すんなりと喉を下っていく。ベタベタした感じはまったくなく、最高の喉ごし。自分の乳首を咥えたまま、あたしは、んんーんとうめき声をあげ、ベッドの上、身体をくねくねさせた。
もう一度、強く吸うと、またミルクが口の中にビュッと飛んでくる。快感が全身に波状攻撃。小さなクレシェンドで盛り上がってきて、また軽やかに弾む。この快感、あたしの身体の中から溢れてくる快感なのに、あたしを舞い狂わせて、楽しんでいるみたい。
あたしは思わず絶叫の悲鳴を上げた。外にいる人に聞こえてなければいいけど、と願った。
もっと欲しい! 滑らかに、ちゅうちゅうと続けて吸うことに決めた。一定のリズムで吸って、ミルクを口の中に吸いこみ始める。吸うたびにミルクが口の中に流れ込んできて、喉を下っていく。
もっと重要なことは、自分の母乳を吸いながら、身体の奥で、お馴染みのじんじんした疼きが高まってきてることだった。あそこをいじって感じる感覚と同じ感覚が高まってくる。あたしは自分の乳首を咥え、自分の母乳を吸いながら、ベッドの上、プルプル震えていた。目を閉じ、いま経験している不思議な感覚とその快感の大きさをじっくり味わおうと思った。もっともっと吸って、もっともっと味わって、そして……何もなくなった。
もう一度、吸ってみたけど、何もない。強烈な絶頂に向かって高まっていたところだったのに、徐々に、鎮まりはじめていく。
最初、ちょっと困惑した。バカなこと言っているように聞こえるのは知ってるけど、あたしは、自分のしてることにすごく夢中になっていて、本当に何が起きたか理解できずにいたのだ。
ちょっとがっかりして、乳房を口から出した。あたしの唾でテカテカに光ってる。けど、ミルクはなかった。そして、すぐに、何が起きたか理解したのだった。もう出しきっちゃったということ。
飲んだミルクでお腹が少しいっぱいに感じたけど、それは無視して、素早くもう一方のおっぱいを手に取り、口の中に押しこんだ。まるで、おしゃぶりを掴んだ赤ちゃんのように。
勃起した乳首を口に入れ、すぐに、一定のリズムでちゅうちゅう吸い始めた。さっきの乳房で試していて、とても気持ちいいと分かってるやり方だ。
そして、それを始めると瞬時的に、あたしの身体の中の緊張感が募り始めた。じんじんと疼いて、やがて絶頂に導かれていく、あの緊張感! きつめのショーツを履いていたので、ベッドの上、身体をくねくねさせると、それに合わせてショーツの生地がクリトリスを擦る感じになる。
その時、アッと思った。あたし、自分の持ち物の半分しか使っていないじゃないの! あたしには手がふたつあったんだ!
左手で乳房を口に持ち上げる一方で、右手を素早く股間に持っていった。指をもぞもぞさせて、ショーツの腰バンドの中に潜らせた。あたしの指たちは、あたしのすべすべした無毛の丘を下って行って、あそこの唇へと到着した。
びちゃびちゃ! それに、いつもよりねっとりしてる。
いったん、指を優しくバギナの中に入れて指を濡らした。それから戻って、固くなってる小さなクリトリスを見つけた。それに触れた途端、思わず悲鳴を上げた。その衝撃に、思わず乳首を強く吸う。
でも、それもつかの間。すぐに一定の、あたしにとっては完璧と言えるリズムに戻っていた。これがいいの! 最高なの!
舌で乳首を弾き、口でミルクを吸い取りながら、指はクリトリスを相手に踊り続ける。
前にキッチンで感じたオーガズムの時は、クリトリスへの仕事はしていなかった。それに比べると、コレは! 多重の攻撃!
身体が勝手に動き、どんどん速度を上げてくる。ほとんど何も考えられなかった。頭の中が真っ白になっていく。クリをいじる指はすごい速さでプルプル動いているし、自分の乳首にむしゃぶりついて、すごい勢いで吸っている。あんまり速く吸うもんだから、ミルクが口から溢れて、頬や首を滴り流れていた。
まるで、最初からずっとオーガズムを感じ続けていたような感じだった。何と言うか、ずーっと絶頂状態に達し続けていたんだけど。でも、本当は、それは序章にすぎなくて、とうとう、トドメのオーガズムが発生したのだった。
始まりは、喉の奥からだった。吸いだしたミルクをゴクゴク音を立てながらお腹の中へと流しこんだのだけど、その瞬間、全身が痙攣しだして、目も三白眼になった感じがした。そして強力な熱が乳首のあたりから湧き上がってきて、全身をぎゅーんと貫いて、一直線にクリトリスを直撃したのだ。
とたんに、何もかもが美しくてたまらなくなった。オーガズムを越えた経験だった。圧倒的な多幸感と純粋な快感に全身が包まれる感覚。「美」を感じた。あたしは口を開き、大きな溜息をついた。それに合わせて、空っぽになった乳房が口から離れ、元の位置に戻った。
本当の意味での絶頂に到達し、そして、ゆっくりと興奮が引いていく。思わず、叫んでいた。
「ああ、神様!」
「ぶぶーっ! はずれ!」
うっとりと目を閉じて休んでいるところに、ベッドのふもとの方から聞き覚えのあるセクシーな声が聞こえた。一瞬、ウェンディかジーナの声かと思ったけど、もちろん、あたしもそんなバカではない。それまで感じていた多幸感が一気にしぼんで、肌がぞわっと強張った。手を脚の間からぱっと離して、目を開いた。
最初はあたりの状況がつかめなかったけど、すぐに、リリスの姿を認めた。ベッドの先に立っている。片手をベッドについて、もたれかかり、尻尾を誘惑的に振っている。リリスはあたしのことをじっと見つめていた。目が燃えるような赤色をしていた。
「もうイヤ!」 あたしはそう叫んで、ベッドの中、跳ねるようにして身体を丸め、両膝を抱えた。
リリスは勝ち誇ったようにあごを突き上げ、ケラケラ笑って、ゆっくりとベッドの横へと回ってきた。
「あなたは、登場するときは、大きな音を立てて、床をぶち破って出てくるものだと思ってたけど?」
リリスは人間ではないとは分かっていたけど、彼女にオナニーしているところを見られて、ひどく恥ずかしい気持ちだった。それにリリスに会うのがちょっと居心地悪い感じもしていた。昨日の夜にリリスが来たわけだけど、あたしは本気でリリスが実在するとは思っていなかったと思う。夢かなんかに違いないと。でも今は彼女が本物だと知っている。危険な存在なのだと知ってるし、セクシーだなとも感じる。
リリスはベッドの横に来て、あたしの隣に腰を降ろした。そしてあたしの手首を握った。彼女の熱を感じる。
「あたしには、したいことを何でもできるの。今夜は、わざとらしい劇的な登場をする必要がなかっただけ」
と、リリスはつまらなさそうに言った。そして、握ったあたしの右手を顔に近づけ、ニヤリと邪悪な笑身を浮かべながら、あたしの指先の匂いを嗅いだ。彼女の口から長い舌がにゅるりと出てきて、あたしの指に巻きつき、そこに付着している愛液を舐めはじめた。
確かに不思議に気持ち良かったけれど、まだ怖かったし、思わず手をひっこめた。そして、また、両膝を抱え、体育座りの姿勢に戻った。リリスは片眉を持ち上げてあたしを見た。
「おや? あたしたちお友だちだと思っていたけど?」 と唇を尖らせて言う。
「どうかしら」
「傷つくわねえ」 とリリスは、さして傷ついてもいない声の調子で言った。そうして、ベッドにごろりと転がり、あたしの隣に横になった。
「でも、あたしに言わせると、あんたは、今日は嫌っても、明日には好きになるような傾向があるみたいだし」
そう言って、あたしの腕の中に手を伸ばし、乳房を軽くつねった。痛くはなかったけど、気持ちよくもなかった。あたしは身体をよけ、リリスを睨みつけ、囁き声に近い声で言った。
「やめて」
「で? おっぱいを取り除いてほしくないの? 今朝は、ずいぶん、はっきりと言ってたけど」 と、またあたしの胸をつねった。
「いえ、あたし……気が変わったわ」
「大事なものになってきたということ?」 と言ってリリスはまた笑った。「ごめんなさいね。ちょっと悪かったわね」 でも、やっぱりケラケラ笑い、あたしの胸から手を離した。
「このままにしておきたいわ。ありがとう」
ちょっと気分を取りなおして、そう答えた。リリスはかなり上機嫌のように思えた。
「あんた、ずいぶん、おっぱいを楽しんでるみたいじゃない」 リリスにそう言われ、あたしは顔を真っ赤にした。
「いいってことよ。気にしないで。あたし、そういうことに引っかかるタイプじゃないから」 と、リリスは、何でもないことのように宙空に目をやった。
また、何だか恥ずかしい感じがした。こういう状況なので、恥ずかしさもへったくれもないとは思うけど、やっぱり恥ずかしい。「ああ、神様、どうしたらいいの?」とか言うのが普通だろうけど、これから自分の魂の3分の2を売ろうという時に、神様のことを口に出すのも、あまり気乗りがしない。
時計を見たら、まだ9時になったばかりだった。
「今夜はちょっと早いんじゃない?」
話題を変えようと思ってそう言った。リリスも時計を見た。
「ふたつ目の願い事、いまからでもいいわよ。別に願い事に都合の悪い時間なんてないし。どうして? あんたの友だちに聞かれるのを恐れているの? 心配無用よ。あたしは人に見られたいと思った時にしか見えないから」
「あの人たちはあたしの友達なんかじゃないわ」
打ちひしがれた気持ちを隠しきれなくて、吐き捨てるような声の調子になっていた。とは言え、ウェンディたちが家の中に入ってくる様子でもないのは嬉しかった。こんな状況を見られたらどうなることか。
「あら、友だちじゃないの?」 リリスは本心から驚いた顔をして言った。「つまり、こういうこと? あの人たちが、あんたの大きなおっぱいを見て、お友だちにしてくださいとひれ伏して懇願すると思ったのに、そうならなかったということ?」
まさにあたしが想像していたことをリリスが知っていたこと、そして、そうならなかったことをぜんぜん驚いていないのは、明らかだった。
「どうなったか、知ってるんでしょ? 分かるわ」
そういうとリリスはにんまりした顔であたしを見て、ベッドから降りて立った。あたしは抱えていた両膝を離した。リリスはゆっくりと部屋の中を歩き始めた。ゆっくり行ったり来たりを繰り返しながら、視線はずっとあたしに向けている。
「まあ、正確に何がまずかったのか言ってごらんよ」
そう言われても、あたしは、その質問に答えたくない気持ちだった。でも、仕方ない。がっくりと肩を落として話し始めた。
「ずっと前からあこがれていた外見に変わったら、不安感も消えるだろうって思っていたのよ。でも、間違っていたの……」
リリスは行ったり来たりを繰り返していたが、あたしの正面に来た時、口を開いた。
「ということは、正確に、あんた、自分に何が欠けていると思ってるの? 何を出せばあんたの助けになると?」
ちょっと時間をかけて考えてみた。外面的なことじゃない。内面的な何かが欠けているのは明らかだった。あたしを引っ込み思案にしているのは外見じゃない。何か別のモノ。
「分からないわ。社交の場では隅っこに引きこもりたいと思うし、何か発言を求められるような場面になると、いつも、バカなことを言ってしまう」 と頭を振った。
リリスは歩き続けていて、また、あたしの正面に来た時、立ち止って言った。
「いつもバカなことを言ってるのに、おしゃべりし続けて、友だちを作っている人間は山ほどいるわよ」
あたしは不思議そうな顔をしてリリスを見上げた。リリスがそういうことを言うとは思っていなかったから。リリスはそんなあたしの反応に気づいたみたい。
「あたしはね、あんたに正確にお願い事をしてほしいだけよ。今回は、紛らわしいところがないように」
あたしは頷いた。実際、とても親切な助言だわ。
そして考えた。社交面で引っ込み思案なところ。リリスにそう言われたけど、その通りだ。問題は、あたしがおバカなことを言うとかするとか、そういうところにあるのではない。問題は、あたしが、バカなことを言うまいとか、おどおどするまいと思うあまり、あまりに神経質になって、そもそも、何もできなくなってしまうところだ。
「でも、確かにあなたの言うとおり。バカなことを言うとかそういうところが問題じゃない。何と言うか、あたしに必要なのは……自信かも」
リリスはそれを聞いて、訳知り顔で頷いた。
「自信、勇気、目的意識……」
リリスは、ひとつひとつの言葉をゆっくりと言い、あたしも、ひとつひとつの言葉に頷いた。リリスは、まさにあたしが必要としていることを述べてくれている。胸が大きくなったら、それが間接的な要因となって、得ることができるとばかり思っていたこと、それを全部、直接的に言ってくれている。
「ええ、そういうものが欲しい」
そう答えたら、リリスは動きを止めて、あたしをじっと見つめた。
「じゃあ、本当に欲しいモノを正確に言いなさいよ」
リリスの瞳は真っ黒に変わっていた。あたしはちょっとドキドキしてきて、彼女から視線を外し、目を伏せた。願い事を言うのが怖い。怖いけど、欲しいモノがあるのは確か。単なる「勇気」じゃ足りない。それ以上の何かが必要なのだ。単なる「大胆さ」でもない。それ以上の何か……。どーんと肝が据わった気持ちになれる何か。よく、男の人たちが、怖気づいた仲間に「お前、キンタマついてるのか?」ってからかうけど、まさにアレがあたしに欠けている! そうなのだ! あの、どーんと落ちついた感じで他人に対処できるような肝が! キンタマがあたしには欠けているのだ!
「キンタマが欲しい! 分かるでしょう?」
ようやく、求めていた言葉が頭に浮かんできて、あたしは叫んだ。
突然、リリスの瞳が真っ赤に燃えあがり、顔に不思議な笑みが浮かんだ。あたしの返事を聞いて、嬉しい驚きを感じたみたいに。それを見て気持ち良かった。さっきの言葉を言えたこと自体、あたしはすでに大胆さを獲得したような感じになった。
「もう叶えたわよ!」 そうリリスは言った。
でも、本当に肝が据わった感じになれたか見てないうちに(というか、何を見たらそんな気持ちになるのか自分でも分からなかったけど)、またもや、リリスの尻尾がびゅーんと飛んできて、あたしの頭を直撃! あたしはすぐに気を失ってしまった。