指には、それまでよりもずっとたくさん精液がついていた。指を口に入れた後、舌でこね回すようにして味わった。思ったより濃厚な味がして驚いた。舌を口の中の天井部分に当てて、こねるようにして、香りを鼻に抜けるようにさせた。
この味、好きだった。嘘を言っても始まらない。悪い味じゃないわ。
口の中のモノを飲み込んで、また指を身体に戻して、さらに新しいのをすくった。何を口に入れてよくて、何がいけないかなんてすっかり忘れ、今は、これを味わうことを純粋に楽しもうと決めた。どうせ、誰にも見られていないし、構わないと思った。
じゃにむに指で精液をすくっては、口に運ぶ。口の中、まだ味わってる最中でも、指を身体に戻し、新しいドロドロを探し、すくい取っていた。おへその水たまりからも、おっぱいからも、さらにはおちんちんの先端にも指を伸ばして、すくい取り、口に運んだ。
香りも味もすごく魅惑的だった。うまく言葉で説明できない。それに、興奮させるものでもあった。その存在を無視しようと頑張っていたけど、生温かい精液を飲み下せば、飲み下すほど、あたしのおちんちんは固くなっていった。そして、気がつくと、またも勃起して直立していた。
唇のところはヌルヌルまみれだったし、ほっぺたにも少しついていたけど、身体に目をやったら、テカテカに光ってはいたものの、いつの間にか、白濁はすっかり姿を消していた。知らぬ間に、全部すくって食べてしまったのだ。どんだけ食べたか、自分でも分からない。よっぽど、気が狂ったように貪り続けていたのだろう。
ペニスが疼いていたし、触りたいと思う自分もいたけど、最後の数滴を飲み下すと、突然、何だかおどおどした気持ちに変わってしまった。それに、身体のベトベト感が急に気になってくる。
「シャワーを浴びなきゃ」
自分におちんちんができていたこと、生れて初めてのペニスからのオーガズムを感じたこと、そして……自分が出した精液を食べたこと。そんな興奮が治まっていくのに合わせて、不思議と無感覚になっているのに気がついた。ついさっきまでおちんちんのことが気になっていたのに、射精をし、後始末を終えると急に無関心になる。男の人ってこうなのか? でも、味や匂いはまだ残っていて、その点でのドキドキ感はまだ残っていた。
ベッドを汚す心配がなくなったので、立ち上がった。大きなおっぱいがぶるんぶるんと揺れる。それと同じように、勃起状態のおちんちんもぶるんぶるんと揺れた。それを見て、ちょっとたじろいだ。
でも、今日はこのおちんちんのことは無視しようと決めた。もう、おちんちんについては充分遊んで楽しんだし、そもそも、こんなモノがあたしの身体にくっついてること自体、決して、正しいことじゃないのだ。今日は、この後は、いつも通りの生活をして、その後、リリスに取り除いてもらうよう頼もう。それで、この件は一件落着。
そう心に決めただけでも、ずいぶん気休めになった。いつか後になって、このことを思い出し、あたしは、そんなこともあったわねと大笑いするはず。それから、誰か彼氏を見つけよう。だって、アノ味、もっと味わいたいから。
そのように、おちんちんのことはさしあたり無視しようと決め込んだものの、たったひとつ問題があった。前にも言ったように、この大きなおちんちんが勃起していること。
もう、コレのことは考えまいと決めたのに、まだ勃起したままだ。勃起するなと思えば思うほど、逆にいっそう勃起してくるみたい。
椅子に掛けてあるタオルを掴んで、胸の周りを包んだ。大きなおっぱいのおかげで、胸のところ、タオルが大きく盛り上がって見えるのに、その胸の谷間の向こうに、もうひとつ大きな盛り上がりが見えて、がっかりする。ビーンっと突っ立ってるんだもん。
廊下に出てウェンディやウェンディの友だちに出くわしたらどうなるか、想像すらできない。あたしは部屋の中を見回し、テレビのリモコンとiPodを入れておいたバスケットを見つけた。それを取って、股間の前に被せた。どうして変なところにテントができてるのかを説明するよりも、どうしてバスケットを持っているのかのほうが説明しやすいから。
部屋のドアを開けて、首を出した。家の中は静かだし、誰もいない感じ。素早く部屋からバスルームまでの数メートルをダッシュ!!
バスルームに入った後、すぐに鍵をかけ、バスケットを降ろした。そして、ふうーっと安堵の溜息をつく。
タオルを剥いで、シャワールームに入ろうとした時、鏡に映った自分の姿が目に入った。長い髪、愛らしい目、張りのあるおっぱい、曲線美豊かな腰、長い脚、そしてビンビン跳ねてる大きなおちんちん。
どうしてだか分からないけど、ふと、思った。これらの部分部分が一緒に組み合わさった自分の姿が、何と言うか……いい感じだなと。こんな格好でも大丈夫なのと自分に問いかけたわけではない。ただ、自分の姿を見て、「これって、何だか、セクシー」と自然に感じたのだった。
でも、そんなふうに感じたと自覚してすぐに、頬が真っ赤になるのを感じた。恥ずかしくなって、あたしは鏡を見ないようにしてシャワーに飛び込んだ。
シャワーを浴び、髪を洗った。身体を洗う時、下を見ないようにしたし、ペニスも洗わなかった。シャワーのお湯をかけてれば充分清潔になるだろうと思った。依然として、アレは存在していないと思いこみ続けたのだった。
シャワーを浴びていたのは、ほんの数分。すぐに出て、身体を拭いた。意識的に鏡は見ないようにした。こんな姿をセクシーだと思った自分が恥ずかしかったし、そういう気持ちになりたくなかったから。
タオルを身体に巻いて、ドライアーで髪を乾かした。それを終えた時、ちょっとだけ下を見た。そしてビックリする。だって、まだあそこが勃起したままだったから。
まあいいわ、コレのことについて悩むのは自分の部屋に戻ってからにしよう。今日は日曜日だから、気になったら、部屋に閉じこもって、外に一歩も出なければいい。退学になってるんだから授業の心配もない。
バスルームのドアの鍵を開け、ちょっとだけ開けた。聞き耳を立てたが、やっぱり静かなまま。
あたしは素早くシンクに置いておいたバスケットを取って、ドアを開け、もう一度、外をチェックした。誰もいない。びくびくしながら、つま先立ちで部屋へと戻った。歩くと、乳房とおちんちんが同じリズムで上下に揺れるのを感じる。誰もいないのに、顔が赤くなるのを感じた。
そうして自分の部屋に戻り、ドアを閉めた。
「ふうーっ!」
ドアが閉まる音を聞きながら、安心して溜息をついた。安心すると、すぐにタオルが気になった。これを巻いてると、おちんちんにも乳首にも擦れて、妙に気になってしまう。あたしはタオルを剥いで、床に放り投げ、素っ裸になった。そうしてベッドに腰を降ろした。
両手を後ろについて、身体を支え、ベッドの端に座る。両膝は閉じていた。その太腿の間から、おちんちんがニョキっと突っ立っていて、その根元には睾丸がふたつ並んでいる。おちんちんは勃起したまま、あたしの顔を見つめていた。
ダメだ、この変な状況、シャワーを浴びても全然変わらない。
その時、何かカチャリと音がした。そして、あたしは全身に鳥肌が立つのを感じた。
部屋のドアに鍵をしてなかった! ドアが勢いよく開いた!
「ねえ、ラリッサ、ジーナが帰ったの。それで……え? な、何?」
ドアのところ、ウェンディが立っていた。目をまん丸にさせてこっちを見ている。
あたしは必死に枕を探し、身体の前に置いて隠した。でも、遅すぎた。ウェンディはあたしの姿を見た後だった! もう何も考えられない!
「あう……あわ……あう……」
それしか言えなかった。陸に上がった魚のように口をパクパクさせるだけ。
ウェンディは長い間、ただあたしを見つめてるだけだった。瞳がガラス玉みたいになっている。顔には、困惑した表情を浮かべている。
しばらくした後、ウェンディはようやく、自分が見た光景を飲み込んだようだった。気が変になりそうなのを心配してるかのように、部屋の中を見回し、何かに気づいたのか、急に後ろを向いて部屋のドアを閉めた。
彼女が後ろを向いた時、黄色いサンドレスの裾が舞い上がった。その時、スカートの下の、彼女の綺麗な長い脚が見え、あたしは奇妙な興奮を感じた。
ウェンディは、またすぐにこっちに振り返って、あたしのところに駆け寄ってきた。目がギラギラしている。顔には、こんなこと信じられないって表情が浮かんでる。
「ラリッサ、いったいどういうこと? 本当に、どういうことなの?」
彼女は完全にショックを受けてる感じだった。あたしの真正面に立って、あたしのおちんちんを見おろしていた。
「あたしは……あたしは……」
何か言おうとしたけど、何を言ったらいいんだろう? こんな状況に備えることなんて考えていなかった。
「こんなことおかしいわよね。何と言うか、これってあなたの身体なわけないんでしょ? これまでも、バスルームとかで、あなたがドアの鍵をかけ忘れてて、あたしがあなたが着替えてるところに入ってしまったことが何度もあったわ。そんな時、あなたの身体を見てるもの。あなたにコレがついてたりなんかしてなかったのは、ちゃんと知ってるもの。あなたは……何て言うの? シーメール? そんな人じゃないこと、ちゃんと知ってるもの。いったい何が起きてるの?」
ウェンディは、このここまで全部、一息で言った。頭に浮かんだことを全部、そのまま口に出しているのは明らか。
あたしは、おどおど、ドキドキしてて、身動きできなかった。それにウェンディにこんなに近くから見られていて、恥ずかしすぎる!
彼女は、その後もいくつかわけのわからないことをしゃべった後、しゃべるのをやめて、あたしの顔を見た。
「あたし……、あたし……」
また話しだそうとしたけど、話しが出てこない。こんな最悪の悪夢、ありえない! もともと、ひと付き合いが苦手で、それに不安を抱えていたというのに、その不安感がいっそう強化されてしまう。だって、ルームメイトがいきなり部屋に入ってきて、女の身体のはずのあたしに巨大なペニスが生えているのを見られたんだもの! ああ、もうお終い!
「どこか悪いの? お医者さんに行く? それとも……これ、意図してしたことなの? ラリッサは、男か何かになろうとしているところなの?」
「違うの、あたし……」
返事しようとしたけど、ウェンディは話しを続けたままだった。
「でも、だったらどうして豊胸手術をうけたの?」 と彼女はあたしの胸を見ながら言った。
「ラリッサの胸は小さかったはず。これ、本物じゃないわ。でも昨日は、あなたはワンダーブラをつけていなかったわ。ほんと、すごい胸! でも……もしあなたが男になろうとしているところだとして、どうして、こんな大きなおっぱいをつけてもらったの? 本当に、本物っぽく見えるわ!」
ウェンディの話しのスピードはますます速くなっていた。もう、話しながら、狂乱状態になっている。そして、あたしはと言うと、それに合わせて、ますますおどおどした状態になっていた。
こんな状況のもとでは、黙ったままでいることの方が、話すことより悪い結果につながると思った。今の状態だと、何にもならない!
「ウェンディ! ストップ!」
「あっ……」
ウェンディは夢から覚めたみたいに、頭を振った。そして、またあたしのおちんちんへと目を降ろした。でも、もうしゃべるのは止めている。
「ああ、えーっと、うーん……全部、説明するわ。だから、ちょっと落ち着いて」
ウェンディは素直に頷いた。
あたしはおちんちんに目を降ろした。あたしの身体の中で、唯一、女性的に柔らかくなっていない部分がココなのね。まだ、カチコチに勃起している。いったい、これからどう話したらいいだろう? 考えなくちゃいけない。
ウェンディには疑問に応えると約束してしまった。どう言ったらいいだろう? このおちんちんをつけてもらうよう、悪魔に魂を売ったなんて言えっこない。たとえウェンディが悪魔の話しを信じてくれたとしても、どうして、こんなおちんちんを願ったのか、その理由を知りたがるだろう。
手術を受けたみたいな角度から話しても、やっぱり同じ問題にぶちあたる。加えて、ウェンディの言うとおり、ふたつの大きなおっぱいと、大きなおちんちん1本は全然、理屈が通じない。
胸が苦しくなってきたし、手に汗を握ってる。苦しい…まるで完全にアレになったみたいに。そう……
「病気!」
そう叫んでいた。
そして我に帰って、一度、咳払いをした。
「……とても珍しい、先天的な病気。白人女性の35万人にひとりにしか生じない病気。さらに最悪なのは、その病気になっているかどうかは20代にならないと分からないらしいの。その病気にかかってるかを知りたければ、子供の時に遺伝子検査を受けなくちゃいけないんだけど、それって、とても高額なの。この病気のことを知ったのは、あたしの遠い叔母さんが、この病気にかかっていたから。でも、子供のころに遺伝子検査を受けた時、結果は、この病気にかかってるかどうかは50%だと言われたわ。だから、誰にもこのことは言わなかった。症状が出ないようにと、ずっと祈り続けながら、黙っていたの。だけど、最近……ウェンディも分かったように、症状が出てしまったのよ」
これまでの人生で、こんなホラ話をスラスラ言えたことは一度もなかった。今の話し、筋が通っているかどうかも分からなかった。ただ、話し始めたら、スラスラと出てきた。あたしは、ウェンディに見えないところで、指をクロスさせた。
何秒か、ウェンディはただ茫然とあたしを見つめたままだった。でも、その後、急に瞳の表情が柔らかくなった。
「それじゃ、それって……医学的なことなのね?」
あたしは安堵してホッと息をついた。どうやら、信じてくれたみたい。それに、何か恥ずかしい病気の状態になったとして、ルームメイトになら、それを秘密にしてくれるよう頼むことができるはず。そうよね?