「ええ、そうなの……つい2週間ほど前に始まったの。元通りに直す手段はあるんだけど、時間がかかることがあって」
あたしは真面目な顔をして説明した。ウェンディは頷いたが、目はまだあたしの勃起を見つめたままだった。
「もし、あなたを変人みたいな気持ちにさせてしまったなら、本当にごめんなさい。でも、とてもショッキングだったから。ショッキングと言うのも、ダメね。悪い意味だわ。何と言うか……驚きだったの……」
ウェンディは本当にすまなそうな顔をしていた。あたしは寛大に振る舞うことにした。そうすることで、彼女に一種の貸しを与えることに。
「いいえ、いいのよ。信じてほしいけど、あたしも始まった時は最初、ショックを受けたんだから。ほんとビックリして……」
そう言って、ふたりとも笑いだした。必要以上に笑ったと思うけど、それによって、部屋の中の緊張感が和らいだ。
ウェンディは、ゆっくりとためらいがちにあたしのそばに来て、ベッドの上、隣に腰を降ろした。
口の中が渇く感じがした。裸でいるときに、他の人とこんなに近くになったことが一度もなかったから。
ウェンディを見てると、知らぬ間におちんちんがヒクヒク言った。すごく均整が取れていて、綺麗なウェンディ。ブロンドの髪の毛も綺麗。これまであたしはずっとウェンディのことを一種の美の見本のように見てきていた。彼女のようになりたいと、称賛してきた。でも、今は、それとはちょっと違う。説明するのが難しいけど……。
「それで、いくつか分かったことがあると思う」 とウェンディが言った。あたしは彼女の方を向き、綺麗な緑色の瞳を覗きこんだ。
「どういうこと?」
「あの、何と言うか、あなた、いつもちょっと人から離れている感じだったでしょ? 他の人たちと付き合うのを嫌っているような。あなたのことを高慢ちきだと思っている人もいるわ。あたしは、あなたは恥ずかしがり屋だとしか思っていなかったけど。でも、考えてみると、あなたは、その病気がいつ発症するかと、ずっと、おどおどしていたのね。そして、とうとう発症してしまったと」
いきなりあたしについての情報を洪水のように聞かされて、頭の中が混乱した。いったいどうして、あたしのことを高慢ちきだなんて思えるの?」
「高慢ちき?」
「分かると思うけど、あなたとても可愛いでしょ? なのに誰にも話しかけないし、男子は無視することに決めているようだったもの」
頭の中がグルグルしていた。これって、おちんちんをつけて歩くことよりも、わけ分からないことかも! 本当に、そんなイメージをあたしは世界にばらまいていたの?
「そんなんじゃ……」 と言いかけた。
「分かってるわ。さっきあたしが言ったように、あなたは、恥ずかしがり屋なだけ。そして、そうなる理由があったんだと分かったの」
ウェンディはそう言って、また、あたしのおちんちんに視線を戻した。あたしは顔を真っ赤にさせた。
「ええ、たぶんそうかも」
ウェンディは、あたしの気持ちを察したのか、ベッドの上、あたしの方を向く形であぐらをかいて座った。あたしは顔を横にし、彼女を見た。
「聞いて。でも、そんなの関係ないわ。このことで頭を悩ます必要なんてないの。他の人がどう思おうが、思わせておけばいいのよ。それを気にする必要はないの」
「だけど……」 本当におどおどした気持ちになっていた。この睾丸がくっついてるので、なおさら。
「ラリッサ、お願いよ、あたしを避けようとするのはやめて。あたしは、あなたのことを助けようとしているの」 ウェンディは優しい声で、そう言ってくれた。にっこり微笑んでくれてもいる。
でも彼女の言葉に、頭が混乱し出す。
「あのね? 時々、他の人が、どうしてあたしがあなたと一緒に住んでるのか訊いてくるのよ。実際、昨日も友だちとそれについて話したし。いつも、『君はアンドレアと仲がいいのに、どうしてラリッサと暮らしているの。ラリッサのことをよく知らないのに』とか言うのよ。そして、あたしはいつも、何かつじつまが合うことを言って答えにするの。でもね、それは、その場しのぎの答えだわ。……あの大学一年の時の歴史101の授業、覚えている?」
何だかウェンディの話しは混乱しているような気がしたけど、一応、返事をした。
「ええ」
「あれの、確か3週目の時だったと思うけど、教授がローマ帝国か何かについて質問したの。そして教授はあなたに当てた。その時のあなた、答えを知らなかったので、トーガとかオルギー(
参考)について、何かジョークを言ったのよ。それを聞いて声に出して笑ったのは教授だけだった。でもね、本当のことを言うと、あの時あたしも、あなたのジョークの意味を理解してたのよ。教室の後ろの方で、あたし、笑いをこらえるのに大変だったんだから。でも教室はしーんとしてた。そして、あなたはものすごく恥ずかしそうな感じになってしまった」
ああ、あの最悪の出来事のこと。あたしの黒歴史。完全にはっきりと覚えている。
「それでね、あなたがあのジョークを言った時、あたし思ったの。この娘、頭がいいわ。好きになったかも、って。で、その週の終わりごろ、あたし、あなたに話しかけたわ。あなたはとても優しくて、可愛いって思った。あなたのことをもっと知りたくなった。だけど、あなたはいつもあたしを遠ざけようとしている感じもしたの。でも、最後には一緒に住むことになったわけ。あの時、一緒に住むようになれば、あなたも心を開いてくれると思っていた。でも、あなたは相変わらず……何と言うか、非社会的というか、変わってくれなかった。でも今は理解できる。病気のことで恥ずかしかったからわざとあたしを遠ざけていたのよね?」
「ええ……」
そうは返事したけど、まだ心の中が虚ろな感じだった。あたしは、周りの状況を完全に誤解してたということ? ずっとあたしを「非社会的」にしてたのは誰? あたし自身だったということ?
「でも、ラリッサ? あなたは恥ずかしがる必要はないの。少なくとも、あたしの前では、そうする必要はないの。あたしは、前からずっとあなたと親友になりたかったのよ。親友は、辛い時期に互いに助け合うものでしょ? あたしの親友になって。あたしにあなたを助けさせて!」
ウェンディの言葉のひとつひとつが頭の中でぐるぐる回っていた。親友? ウェンディと親友になる?
「あたしと親友になってくれるの?」
しばらく沈黙した後、ぼそりと言った。彼女がちょっとうつむくのを見た。悲しそうな顔をしている。ウェンディは、あたしが少しも高慢ちきに振る舞っていたわけではないことを、初めて知ったようだった。あたしには、こんな優しいウェンディと親友になる資格なんてないと思う。
「もちろんよ、どうしてあたしたち一緒に暮らしていると思う? あたしたち、すでに親友じゃないの?」
ウェンディは、あたしに、自己嫌悪から抜け出すチャンスをくれている。あいまいなところも、不確かなところもない。明白にチャンスをくれているところなのだ。
「ええ、もちろん」 そう答え、にっこり笑った。目に涙が溢れてくるのを感じた。
「あたし、あなたのこの姿を見れて嬉しいの」
ウェンディのその言葉にショックを受けた。そして、ウェンディは、あたしがショックを受けたのに気づいたようだった。
「ラリッサに恥ずかしい思いをしてほしくて言ってるんじゃないのよ。でも、あたしは、あなたが困ってる姿をあたしに見せてくれて嬉しいの。あなたが困っていても、あたしは絶対、あなたを傷つけたりしないって分かってくれると思うから」
そういうとウェンディは、あたしが裸でいるにもかかわらず、あたしに寄り添ってきて、両腕であたしを包んだ。
ウェンディがあたしの親友になってくれて、こんなふうに抱いてくれている。それを感じて、涙があたしの頬を伝い流れるのを感じた。
ウェンディは、あたしが引っ込み思案で恥ずかしがり屋でい続けた本当の理由は分かっていない。でも、彼女は、そういうあたしの不安感に直接語りかけてくれている。そして……大きなおっぱいをしているのに、大きなおちんちんを勃起させているという、そんな変な姿で素っ裸でいるあたしなのに、優しく抱いて包んでくれている。それを思った瞬間、あたしは、人づきあいの場面で長年いつも感じていた不安感から、すっかり解放されていくのを感じた。これは完璧だと思った。
長い時間、そのままでいた後、ようやくあたしも泣くのをやめ、ウェンディは抱擁を解いた。そして、ふたり、顔を向きあって、ちょっとためらいがちに目を合わせた。思わず、ふたりとも笑いだした。
「ラリッサはどう感じたか分からないけど、でも、あたし、前より気持ちが軽くなった感じよ」
そうウェンディは言った。あたしも、同じように身体から重荷が降りた感じがした。
「ええ、あたしも。本当にありがとう、ウェンディ」
彼女が、孤立状態のあたしに手を差し伸べて、あたしを救ってくれたのを、ふたりとも知っている。だけど、彼女は、「あたしは何もしてないわ」と答えて、いなした。
「でも……本当にあたしにありがとうと言いたい気持ちなら、ちょっとだけ、いい?……ちょっとだけ見せてほしいの……」
ウェンディは、かすれ声の囁き声になって、言葉の最後のあたりを言った。あたしはビックリして目を丸くした。
無意識に自分の股間に目を降ろすと、こんな感きわまった状況で、ぼろぼろ泣いていたあたしだったのに、あそこの部分は、まあだ、力強く勃起したままでいるのが見えた。それに、先端のところには透明のねばねばした液体が出てる。
「えぇっ?」
すっかりビックリして言った。ウェンディが、あたしのコレに近寄りたいと思ったこと自体にビックリ。
「ねえ、いいでしょう! うふふ。事態が逆で、あたしにコレができたら、あなたも見てみたくなるはずよ!」
逆の立場になったら、どうしたいと思うか、正直、あたしには分からなかった。
「痛い思いをさせたりしないから」
ウェンディはじっとあたしの目を見つめている。本当に興味があるらしいのは明らか。
あたしはちょっと考え込んだ。見られたくないのは本当。でも、「イヤ」とも言いたくなかった。たった今、ふたりは心をうち解けあったばかりだもの。ウェンディとの関係を台無しにしたくなかった。
「いいわ……でも、注意してね。それ……敏感なの」
「ヤッター! 超注意するから安心して、約束する!」
ウェンディは、そう言うと、素早くベッドから飛び降りて、身体を反転させ、あたしと対面する形になった。