僕は次に何をしたら良いか、本当に悩んでいた。まだ、マークの書斎を掃除する仕事は残っていたが、トレーシーが帰ってくるまで時間はたっぷりあった。だが、メイド服についてはどうだろう? トレーシーは、はっきりとは言わなかったが、帰ってきたとき僕があの服を着た姿でいるのを見たいと言っていたと思う。だが僕自身はあまり着たいとは思っていなかった。シシーと呼ばれるのは嫌だったし、僕はゲイではない。
分かっている。確かに昨夜、僕はディルドを口に入れて吸ったし、アヌスに入れた。だが、僕は酔っていたし、トレーシーにコントロールされてやったことだった。それに、あれは本物ではない。プラスチック製なんだ。僕はトレーシーのあそこを舐めるのが好きだし、彼女が僕のペニスをあそこに入れ、僕の上で動いてくれたときの快感を大いに楽しんだのだ。僕がゲイだとしたら、どうしてそんな風になれる?
僕はそのことは頭から消そうとしたが、それでも依然として、何を着たらよいか分からないのは同じだった。トレーシーが僕にメイド服を着てもらいたがっているのは分かる。彼女は僕を雇っている人なのだという点も考慮すべきだと感じていた。だけど、あれを着てるので僕はゲイだと、そういう風にトレーシーに思われるのは嫌だ。
結局、僕はメイド服を着ることに決めた。何だかんだ言っても、トレーシーは僕のボスであるわけだし、この仕事を失ったら、生活していけなくなる。メイド服に合わせて、パンティとブラジャーを身に着けた。加えて、ストッキングとハイヒールも履いた。ブラには何着かパンティを詰め込んで、形を整えた。
着替えを済ませた後、鏡の中を見た。化粧もなく、髪もまとめていないにもかかわらず、僕は女の子のように見えた。もともと鼻が小さく、目が大きいので、顔立ちはかなり女性的だった。唇も男の唇にしては少し厚い。目の上にある細い線が、僕の眉毛だ。昨日、トレーシーに形を整えられ、すっかり女性の眉毛になっている。それに指先には、まだつけ爪がついていたし、赤い塗料も残っている。結局、一日中、つけ爪をつけていたようだ。はずそうという考えが思い浮かばなかったらしい。これで化粧をしたらもっとよく見えるだろうとは分かっていた。だが、その前に、髪の毛を何とかしなければならなかった。
髪を洗ったので、髪のカールはなくなっていた。頭からストレートにさがっている。ブラシで女の子の髪型のようにしようとしたが、もともと、そういう風にカットされていないので無理だった。僕はトレーシーの部屋に行って、カール用のアイロンを見つけた。そして、彼女がやってくれたようにしてみたのだが、僕にはできなかった。結局、髪はまとめてポニーテールにし、頭の後ろ中央から下がるようにした。それほど女性的な髪形ではないが、いろいろ試した中では一番まともに見えた。
次に化粧を試した。最初、化粧は簡単だと思っていたのだが、やってみるとすぐに、これが一番難しいと分かった。僕は最初から濃くつけすぎてしまい、その後は何をやっても、まともに見えるようにはできなかったのである。結局、僕はピエロのような顔になってしまった。そこで僕は顔を洗い直し、メイキャップなしの顔のままでいることにした。トレーシーが理解してくれるだろうと期待して。
女の子への変身を済ませた後、僕はマークの書斎に入り、掃除を始めた。そのときが、マークがどういう人か初めて見た時だった。部屋中に何百枚も写真があって、そのいずれもマークが誰かと並んで写っている写真だった。その男がマークだと分かったのは、彼とトレーシーの結婚写真があったからだ。
その結婚写真を見て、マークが非常に大きな男だと理解した。彼とトレーシーが並んで立って写っているのだが、トレーシーがずっと小さく見える。トレーシーは身長が180センチある。僕より13センチ高い。だが写真からすると、マークは、そのトレーシーより少なくとも10センチは背が高いように見えた。彼は、肩幅も非常に大きく、それによって、トレーシーはなおさら小さく見えていた。
部屋にある他の写真は、皆、映画スターの写真のようだった。何人か、映画で見て知ってる人がいたが、知らない人もいた。だが、美麗な顔かたちや官能的な体つきから察するに、その人たちもショービジネスにいる人たちだろうと分かる。マークが何か受賞している写真もあった。
部屋には、DVDプレーヤーとビデオプレーヤーがついた大きなワイドスクリーンのテレビがあった。それにサラウンド・サウンド・システムも。映画も100本以上はあった。そのいずれもタイトルからポルノ・ビデオだと分かった。大半が同じ製作会社の作品だった。