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「後ろからだと、本当に彼女にそっくりだ」とダミアンは言った。「つまり、カツラとかいろいろつけたら、彼女との違いが全然分からないということだけど。違いはというと……何と言うか……」
「それは無視して」と、背中を反らせてケイシーは言った。「それはないかのように思って、すればいいの。お望みなら、あたしのことを彼女と思ってくれていいのよ。あなたのために、あたしに彼女の代わりをさせて?」
ダミアンはためらった。そして、それは初めてのことではない。ケイシーが途方もない提案をしてきた時からずっとダミアンは居心地が悪い気分だった。これまで彼がケイシーとのこの関係を断たなかったことは、彼がどれほど元のガールフレンドであるアマンダを恋しく思っているのかを証言しているようなものだ。アマンダはケイシーの双子の姉である。彼はアマンダを純粋に心から愛していたのだが、アマンダはほとんど言い訳もせずに彼の元を去ったのだった。ある日、突然、彼女は姿を消してしまったのだった。ダミアンに残されたのは、急いで書きなぐった「ダメだったわ」との伝言だけ。
その後、ダミアンは深い鬱状態に陥った。食事もとらない。ほとんど眠らない。大学の授業も休みはじめ、その後、成績不振で退学してしまった。そんな状態だったので、ケイシーが提案してきた時、ダミアンは、その提案を真面目に考えるほど気持ちが弱くなっていたのだった。
ダミアンはケイシーと初めて会った時から、ケイシーが自分に気があるのを知っていた。自分を見つめるケイシーの眼差しや、一緒にいるときに自分の言葉に反応するケイシーの様子。それはもう明らかだった。それに、ダミアンの方も、そんなケイシーの態度は問題ないと思っていた。人はだれでも誰かを好きになってしまうものだ。そんな大ごとではない。そうダミアンは思っていた。
ダミアンは視線をケイシーの女性的なお尻に落とした。それは、ひとつだけ明瞭な違いがあるものの、アマンダのそれとそっくりに見える。それに、ケイシーは化粧をすると、ほぼ完全にアマンダそっくりに見える。ダミアンとケイシーのふたりにとって、ケイシーがアマンダに似ていることを言わば利用しても、それは一種、理にかなっているとも思えた。ダミアンはアマンダを求め、ケイシーはダミアンを求めているというように、ふたりが求める対象はズレてはいても、満たされることになる欲求は、ふたり共通しているのだ。むしろ、それをしない方が愚かなことだとすら言えるだろう。それに、ともかく、いったい誰が傷つくことになるというのか? 結局、ダミアンは欲していたものを手に入れ、ケイシーも同じく欲していたものを手に入れた。いろんなことを話しあい、いろんなことを行ってきたが、これは完璧な一致といえた。ケイシーが男であることは、何の影響もない些末なことに思えた。
ケイシーの中に自身を押し込みながら、ダミアンは囁いた。「ああ、アマンダ。本当に会いたかったよ」