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Happiness 

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生まれて初めて、今、自分は幸せだと思っている。自分でも、そう思っているのが不思議。というのも、これまでも自分に満足していた時期を経験してきているから。喜びを感じた時期もあるから。自分は幸せだと思った時期もあったから。でも、振り返って、そういう時期を今の本当の幸せと対比させてみると、本当は違っていたんだなあって見ているの。薄ぼんやりしてて、とらえどころがなくって、本物を真似た偽物だったんだなって。

時々、どうやって自分があの生活を耐えてきたのか不思議に思うことがあるわ。毎朝、毎朝、ベッドから起きて、完全に間違った生活をこなす。よくやっていたなって。自分とは無縁で、認めることができない価値観に、よく我慢していたなって。周りからは男らしくあれと期待されるけど、自分はそんな人間じゃないし、そんな人間にならないと分かっている。そんな屈辱感でよく生きていられたなって思う。屈辱というか、恥ずかしさというか、失望させてるなあって気持ち。

多分、あたしはそういうことを無視するように学習したんだと思う。人間には立ち直る力があるし、適応する力もある。あたしもその点はまったく同じなんだと。周りを変えることは無理と思ったから、あたしは、周りの反応は関係ないと思い込むことにした。でもね、関係がないわけはないの。がっちり、関係してきた。そうならないわけないでしょ?

何が変わったのか本当のところ分からない。「ユーリカ!」の瞬間なんかなかった。単に、ある日の朝、「自分が変わる! 自分に嘘をつくのはやめにする!」って言いながら目を覚ましたわけ。多分、徐々に態度での変化が積み重なっていて、自分は、他の人のようになってるフリをしてるけれど、本当は違うということをゆっくりと自覚していたんだと思う。そういう思いは、否認が何層にも積み重なって心の奥底にずっと前から埋められていたんだろうけど、それが蓄積していて、ゆっくりと圧力が高くなっていってて、信じられないほど過度に上昇してしまい、とうとう、耐えがたいレベルまで来てしまったと。そして、自分が変わらなければと思ったと。もう、自分を誤魔化すのは止めなくちゃと思ったと。そういうことだと思うの。

そしてあたしは開始した。少しずつ、少しずつ、自分の人生を変えていった。髪の毛を伸ばした。女性の服を試しに着てみるようになった。遊び半分でお化粧をしてみるようになった。そういう時、自分の家だから他から見られていないというプライバシーもあって、あたしは幸せだった。そういうことをすればするほど、自分の進む道が見えてきたと思ったの。

でも、そういうふうに確実な充実感で自分の意識を叩き壊し続けいたけど、それでも、まだ自分の中に抵抗感があったわ。1000個くらい理由が浮かんできて、しかも、そのひとつひとつに論理性もあって、あたしの決心に食って掛かってくるのよ。自分は女の子じゃない。なろうと思ってもなれないのだ。自分は精神的な障害をもった変人なのだ。「罪深き人」なのだって。100個もの様々なレッテルを自分自身に張り付けた。そのどれもが「罪深き人」と同じくらいネガティブなレッテルばっかり。

でも、自分の本当の気持ちを抑えることができなかった。人は誰も、本当の自分を否定しつつ、何らかの幸せを得ることなどできないものなのよ。そのたった一つの単純な事実を認めたことが、ブレークした瞬間だった。それを悟った後は、もう引き返せないと分かったの。自分自身に抵抗し、社会的偏見から身を守るよう洞窟に潜め、自分自身の否定を通して、暗黙のうちに承諾してしまうことは良くないことなのだって。そういうわけで、あたしはやめた。自分自身の幸福に身を委ねることにしたの。あたしは、自分がならなくては気が済まないと思っている人間へと変わったの。

そして今、あたしは幸せだ。満足している。長かったけれど、とうとう、この世界に居場所を見つけたと思っているのよ。

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[2017/10/24] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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