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「分かってると思うけど、これ別に意味があるわけじゃないからね。いい?」 とライリーは言った。「あたしは…あなたも知ってるように…あたしはゲイとかそういうのじゃないから」
「確かに、違うよな」 とケビンはニヤニヤしながら答えた。
ライリーは彼の足を踏みつけた。「違うんだから!」
だが、ライリー自身、心の中では、この発言はバカっぽいように思えた。この1年、彼は二重生活を送ってきた。一方では、彼はちょっとなよなよしているがごく普通の若い会計士。だが彼の生活にかかわる誰一人として、彼がもう一方の顔を持っていることを疑う人はいなかった。彼は、ホルモンを取り始め、自分の時間の大半を女の子の格好をして過ごしていたのだ。
だが、彼はトランスジェンダーではない。正確には異なるのだ。トランスジェンダーなら、むしろ心の救いになっていたことだろう。彼は、自分が間違った肉体のもとに生まれてしまったと思いつつ大きくなったわけではなかった。彼は自分は女だとは思っていない。ホルモンや衣類や身のこなし方。それらすべてたった一つの目的のために行われてきた。その目的とは男を得るという目的である。
論理は極めて単純だった。男は女が好きなのである。ライリーは男性とのセックスが好きだった。それゆえ、もし自分が女性のような外見を持てば、好きな相手と一緒に寝るチャンスがはるかに増えると思ったわけである。
それはまったく理屈が通っていた。ただ一つ、彼が自分自身をゲイと思っていないという事実を除いては。彼は男性にセックスされる感覚が大好きなだけであった。愛とか親密さとかとは関係がなかったし、セックス以外の点では男と付き合いたいという気持ちはまったくないのは確かだった。純粋に単純な快楽だけ。そして彼の心の中では、この区別こそが、自分のセクシュアリティは「ストレート」側にあると強く主張するのに十分な根拠のように彼には思えていたのである。
「でも、ちょっといいかな? 俺は君と議論する気はないんだけどさ」とケビンが言った。「だけど、君みたいな人がだよ、俺みたいな人とセックスをするってわけだろ? 人はそれをゲイと呼ぶかもしれないし、そうは呼ばないかもしれない。でも、そんなこと誰が気にするかって思うよ。そんなのただのレッテルだろ。そんな区別、誰が必要としてるのかって」
「レッテルねえ」 ライリーはつぶやき、顔に小さく笑みを浮かべた。「そうよね。誰がレッテルを必要としてるのかってことだよね。その考え方、あたし好きよ」