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Out of the bag 

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「一体、どういうことだ?」 と馴染みのある声がした。兄のトーマスの声だった。僕は顔を上げ、兄が純粋に恐怖を感じてる顔をしてドアのところに立っているのを見た。「お、俺は……いったいこれは?」

僕は何を言ってよいか分からなかった。兄が僕の部屋に突然入ってきて、僕が彼女と一緒にベッドにいるところを見るなんて、一番予想していなかったことだから。もちろん、それはそれで充分恥ずかしいことだけど、最悪なのはその点じゃない。それくらいなら、笑い飛ばせていたかもしれない。兄が言葉に詰まるほど驚いたのは、その点じゃなかった。

「せ、説明するよ!」 と呼吸を乱しながら言った。とりあえず、その言葉が口をついて出ていた。僕は毛布をつかんで、ある程度の上品さだけは守ろうとした。でも、上品さにについて言えば、すでに、かなりダメージを与えてしまっていた。兄は僕が隠し続けていたものを見てしまっていた。「これは、見た通りの物とは違うんだ!」

それは嘘だった。実際は、まったく見た通りの物だった。ほぼこの2年間、僕はひそかにホルモンを摂取していて、それに応じて僕のカラダは変化していた。もちろん僕は隠し続けてきた。ジャネットを除くと、僕がトランスジェンダーであることは誰も知らなかった。

「じゃ、じゃあ、何なんだ……」

兄は目を離すことができず、ずっと見つめたままだった。僕はそんな兄をとがめることはしなかった。兄の心の中でギアが変わるのが見て取れた。僕の長い髪の毛、滑らかな肌、だぶだぶのスウェット・スーツを着ていても完全には隠しきれていなかった僕の体の線。それらすべてが突然、兄の認識の中でこれまでとは異なった意味を持った瞬間だった。
 「ちょっと、トミー?」とジャネットが口をはさんだ。彼女は裸体を隠そうともしなかった。「レズリーは女の子なの。あなたはこの子を自分の弟だと思っているでしょうけど、彼女はずっとずっと前から女の子になっているの。こんなふうに事実を知るとは思っていなかったでしょうけど、あなたが知ってよかったと思うわ。バンドエイドで傷口をふさぐように取り繕っても意味がないわ。これが彼女の本当の姿なの。それが嫌なら、とっとと地獄に落ちちゃいなさいよ」

「ジャネット……」

「いいのよ、レズリー。あたし、もう、あなたがコソコソしているのにうんざりしているの。あなたが隠さなくちゃいけないと思っていることにうんざりしている。そんな必要ないのよ。あなたは、自分自身のあるがままの姿でいることに謝る必要なんてないのよ」

「俺は……ああ……俺、い、行かなくちゃ」 とトーマスは言い、言うと同時に走るようにして立ち去った。

「予想していたよりずっと良い結果になったわ」とジャネットが言った。

「本当? ジャネットは、どんなふうになると予想していたの?」

「もっと大声で怒鳴りあうかと。ひどいことを言いあったり。分かるでしょ? よくあることよ。こうなったことは良かったと思う。お兄さんも知ってるべきだもの」

僕は彼女ほど確信はしていなかったけれど、でも、それはどうしようもない。とにかく、とうとう隠れていた猫がバッグから飛び出した(事実が明るみにでた)のだ。

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[2017/10/29] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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