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Outside looking in 

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最初から知っていたと言えればどんなに良いだろうと思っている。これは全部間違いだったと。あたしは夫婦生活の破滅に至る道を進んでいたのだと。それを知っていたと言えたらいいのに。でも、あたしは、そんなことは言わなかったし、言えなかった。あたしは、能天気に、前方に待ち構えている最悪の事態に気づかないふりをしていた。

確かに最初はとてもワクワクすることのように思えた。特にあたしたちの性生活の状態を考えると興奮できることのように思えた。夫とあたしは愛し合っていた。高校時代からずっと一緒だったし、一緒になって後悔したことはまったくない。でも、多くの夫婦がそうであるように、あたしたちの性生活は薄味な感じになってきていた。想像力を掻き立てないというか、つまらないというか。

あたしたちが幸せでなかったと言っているのではない。その逆だ。セックスは良かった。すごくはなかったというだけ。冒険的なところがなかったというだけ。ただ、無難で、普通に良かったとということ。そして、あたしたちの性生活以外の生活も似たような感じになっていた。欲しいものはすべて手に入れていた。白い杭垣で囲まれた郊外の家。飼い犬。新車。良い職業。完璧な生活だった。

示唆はどこからともなく現れた。あるいは、少なくともそう思えた。今から考えると、実際は違っていたのだろうと思う。彼はずっと、ずっと前から計画していたのだ。多分、何年も前から。でも、当時は、あたしも、ちょっと変わっているけど面白そうに思ったのだった。あたしたちのエロティックなことについてのレパートリーを限界まで拡大する方法になると。あたしは警戒はしていたけれど、興奮もしていた。あたしたちのベッドに他の人間を招き入れるなんて、性的にとても危険なように思えた。でも、彼は強く求めたし、結局、あたしも同意したのだった。

最初の驚きは、その招き入れる人間として彼が選んだ人を見たときだった。あたしは、たいていの男の人と同じように、彼は女性を招き入れたいと思っているんだろうと思い込んでいた。そうなるだろうと心づもりはできていたし、あたしとしても、むしろ好ましいと思っていた。あたし自身は、性的な立ち位置を広げるために女性とするなんて試したことがなかったので、それは良い機会になるのではないかと思った。しかし、夫は違ったことを考えていたのだった。いや、彼の観点からすれば、あたしと同じ考え方をしていたと言うべきか。分からないけど。ともかく、彼があたしたちの性生活に加えようと連れてきた人は、強靭そうな大きな体をした逞しい男性だったのだ。

あの最初の時、夫はその男性の肌を触れることすらしなかった。とてもおどおどしているように見えた。ほとんど、可愛いと形容できるほどの様子だった。その日のことがすべて終わったとき、これで、この話はおしまいになるだろうとあたしは思った。でも、そうはならなかった。再び、同じことが起き、そして、また再び。結局、毎週のように繰り返されることになった。そして、それを繰り返すたびに、夫は大胆になっていった。

あたしは、夫と男性が初めてキスをするところを見たとき、何か様子が変だと気づいていたと思う。互いに唇をくっつけ、舌を絡ませあうのを見ながら、ふたりともどれだけ興奮しているか、容易に見て取れた。その間、あたしはというと、そばで椅子に座って、ふたりの様子を見ているだけ。ふたりからは忘れられた存在になっていた。夫が初めて他の男性にフェラチオをするのを見たときも、あたしは同じ状況だった。それに、彼があたしたちのパートナーのひとりにセックスされるのを見たときも。さらには、もうひとり新たな男性が加わって、夫がふたりの男性の間になって行為を受けているのを見たときも。後から考えると、あたしは単なる観察者になっていた。

そして、その頃から夫は変わり始めたのだった。最初は、はっきりと分かったわけではなかった。あたしのランジェリーがどこかにいってしまって見当たらないことがよくあった。その後、それは、しばらくすると元の場所に戻っているのだけど、かなり伸びて緩くなっているのだった。お化粧品も、普通より早くなくなるようになっていた。でも、あたしが、そういう断片的な情報をつなぎ合わせるようになったのは、夫が脚の体毛を剃り始めた時になってからだった。そして、その時、あたしは夫はすでにどこかに行ってしまい、元の夫ではなくなっていると知ったのだった。

それが2年前のこと。それ以来、夫はどんどん大胆になってきている。何も恐れなくなってきている。彼は自分の女性的な側面を隠そうとすることすらなくなっている。夫は、これは単にセックスの問題、妄想の一部にすぎないと言っている。だけど、あたしは真実を知っている。彼が何を本当に欲しているかを知っている。夫が男性の人格でいる時ですら、その歩き方、話し方からそれが分かる。夫があたしと別れるのは時間の問題だと思っている。あたしの中には、それを歓迎している部分がある。そうなった方が彼のためだろうと思うから。その方が彼は幸せだろうと思うから。彼がいない人生が恐ろしいものでないなら、あたし自分から断ち切るだろう。でも、あたしにはそれができない。しようとも思わない。

そういうわけで、夫が本当の自分自身になりたいと思い、自分が望む人生を生きる勇気を奮い起こすまでは、あたしは、自分の夫婦生活であるのに部外者であり傍観するだけという今の状態で満足しなければならないのだろう。

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[2017/10/29] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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