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「ああ、ジャネット。何なの? あたしの部屋に突然入ってくるなんて、何か、そんなに大事なことがあったとでも言うの?」 とアーロンはヘッドフォンを降ろしながら言った。
「えーと……ちょっと何か着たらいいと思わないの?」 と彼の姉が目を逸らしながら言った。
アーロンは両手を腰に当てた。「イヤよ! ここはあたしの部屋。あたしは、裸のままでいたいと思ったら、そうするの。それが気に入らないなら、出ていけばいいじゃない? さあ、どうしたいの?」
「姉さんは、ただ……ただ、あんたに起きてることについて話をしたいだけ。ここのところ、あんたがすごく変わってしまったことについて……」
「神様に誓ってもいいわ、あたしには何の問題もないわ。何回、同じことを言わなきゃいけないの? あたしはあたし。完全に。もう、部屋から出て行ってよ!」
「でも、あんたは違うわ! 自分をよく見てみてよ、アーロン! あんたが、あれを聞くようになってから、どんどん……」
「ああ、また、その話? あたしが誰かに催眠術を掛けられているって話でしょ? あたしが何かに変えられようとしているって。何かって何? 女の子? 本気で言ってるの? もうちょっとマシなこと考えられないの?」
「でも、鏡を見てごらんなさいよ! あ、あんたの胸、大きくなっているじゃない。それに髪の毛も伸ばしちゃって。こともあろうに、この前なんか、ドレスを着て学校に行ったでしょ。どうして自分が変わってきているのが分からないの? どうして自分に起きていることが見えていないの?」
「まず第一に、ジャネット!」 とアーロンは咎める口調で言い始めた。「第一に、胸が膨らんできているのはホルモンのバランスが崩れているせいなの。お医者さんは、これはすぐに元に戻るって言ってるわ。それに髪の毛のこと? ねえ、今は何時代なのよ? 50年代? 男も時々髪の毛を伸ばした時代があるじゃない。それにドレスのことも。あれはボーイズ・ドレスって言うの、ジャネット! ファッションの一つなのよ」
「でも……」
「姉さんは、あたしがあの自助音声を聞くようになってからずっとあたしに突っかかってばかり。もう、うんざりしているわ。姉さん自身が何の目的も持たないからと言って、あたしまで持っていないと思うのはやめて。最近、あまり一緒になることがないから、姉さんがイラついているのは分かるけど、もう、姉さんに縛り付けられることは嫌なの。あたしは自分の人生を考えているところ。姉さんもそうすべきよ。だからもういいでしょ? あたしをひとりにしてよ、お願いだから」
「い、いいわ。分かった。姉さんには、あんたに分からせることはできないみたいね。姉さんの言ってることが分からない。でも、あんたは幸せそうだし。だから……」
「そうよ、あたしは幸せ。姉さんも幸せ。だから部屋から出て行って!」