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「さあ、みんな! 大事な試合の前に、うちの逞しくて強い男たちの写真を撮っておきましょう?」 とティナが言った。
「僕たちのこと、からかわなくたっていいよ」とラッセルが言った。彼は長いブロンドの髪をしている。彼だけが、無理にかつらをつけずに地毛で通っている。「僕たちがこんな格好しなくちゃいけないだけで、十分だろ?」
「ティナはちょっとあんたたちをからかわずにいられないのよね」とケイトが口を挟んだ。「だって、賭けの一部だから。あたしたちがこういう格好しないと、賭けが成立しないもの」
「ティナ、本気で僕たちにこれをさせるつもりなのか?」 とマークが訊いた。避けられない質問だった。彼はこの中で一番背が高い。先発ピッチャーをする予定である。「分かると思うけど、僕たちを見るためにずいぶん人が集まってる。スカウトもいるかも」
マークのガールフレンドのメリッサが反応した。「そして、その人たち、あなたたちがどれだけ綺麗になれるか確かめるんじゃない? 私に言わせれば、そろそろメジャー・リーグももう少し多様性を持つ時代になってきたと思うの。今回のことは、あなたたちのためになるかもしれないわ」
「ああ、そうだよ」 とポールが口を挟んだ。彼は3人の中で一番背が小さい。二塁手をしている。「あの人たち、多様性なんてどうでもいいと思ってるんだ。それより、チームの勝利に貢献できる人かどうかだけを考えている」
「それこそ、私が言いたいこと」とメリッサが言った。「今日マークがすべきことは、良いピッチングをすること。そうすれば大丈夫。今回ダメだったらダメで、私は来月中ずっと『彼女』なら大丈夫って言い続けるから」
「こんなことが本当に起きているなんて信じられない」とふさぎ込んだ様子でラッセルが言った。「僕たちこんなことするはめになるなんて、絶対にありえなかったのに」
「ええ、私たちにビキニの格好で歩き回らせていただろうってことでしょ? それとも、何か似たようなセクシーなことをさせていたのにって?」 とティナが答えた。「でも、これもいいんじゃないかと思うわよ。多分、もう1ヶ月くらい、私たちの言うことに従ったら、あんたたちも女の子になるというのがどういうことか理解するようになると思うわ。それに、あんたたち3人とも、すごく綺麗な娘になったじゃない? それ、気に入るかもしれないわよ」
「あなたたちの可能性がどんだけあるか、誰にも分らないものね」とメリッサが付け加えた。「来月、ムラムラした男たちの大群があんたたちの後をぞろぞろついて回ることにならなかったとしたら、むしろ、その方が驚きだわ」
「ああ、そんなこと言うのやめてくれ」とポールが言った。
「ええ、どうして?」とケイトが言った。「そういうのって誉め言葉なんだよって言ってたの、あなただったじゃない? 男たちが関心を示しているって示すのを、むしろ感謝すべきなんだよって。違う? まあ、今はあなたたちも、そういう『誉め言葉』に対処しなくちゃいけなくなったってことよ。まあ、2週間くらいしたら、あなたたちがどのくらいその誉め言葉を気に入るようになっているか、これから見せてもらうわ」
「もうそのくらいにして、ケイト。十分よ。彼らも分かってるわ。イジワルする必要はないんだから。さあ、写真を撮ってしまいましょう。それから、あんたたちはウォームアップを始めるように。じゃあ、笑って!」