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A lie 

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あたしのすべては嘘いつわり。あなたはあたしを見る。あたしの容姿や、あたしの顔、それに、とても決まり決まった反応を引き起こすように作り上げられたあたしの人格を見る。そして、お客様であるあなたにとって、あたしの外見や反応は完璧。

でもあたしは真実を知っている。自分がどんな存在であるかを知っている。あたしは何者であるか知っている。あたしは変形を受けてきた。毎回、鏡を見るたび、あたしは自分が失ったものを否応なく自覚させられる。

以前はすべてを手にしていた。妻もいたし、家族もいたし、仕事もあった。……でも、それらすべてが奪われた。生きるに値する人生を構成するすべてを強引に奪われた。それに思い起こせば……ああ、怒りがわいてくる。ひどく、むかついてくる。どんなことかって? このような選択をあたし自身がしたと思う? 自分は他の人とはどこか「違ったふうに」生まれてきたのだと説明しなくちゃいけなかったことってある? 他の男子たちとは馴染めないといつも感じていたことは? 自分は本当は女の子なのだといつも思っていたとかは? いや、あたしはそれを訴えようとしているのではない。

誘拐され、体を変えられ、洗脳された。それがあたしの話。今や、以前のあたしの生活にかかわった人々の誰も、今のあたしを認識できないだろう。実際、笑えちゃうんだけど、あたしは前はアジア系の人間ではなかった。ごく普通のアメリカ人で、たまたまタイに旅行に行っただけだった。どうやって、あたしをこんな体に変えたか知らないし、知りたくもない。元の生活に戻ることすらあきらめてしまった。いまの望みは、すべて忘れてしまうということだけ。自分がどんな人間だったか、そういうのをすべて忘れてしまいたい。それだけ。

それってわがままな考え方? それとも立派な考え方? もう、そういうことすら分からない。本当に。

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[2017/11/02] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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