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写真家 (2) 

僕はボブに、僕がめったに人物写真は撮らないと説明した。これはホント。僕はたいてい自然の風景を撮っている。何枚か、結婚式とか子供の誕生会とかの写真も撮っているけど、たいてい、友達のためとかでだ。だから、自分でも、うまい写真が撮れるかどうか分からなかった。だが、ボブに何回かしつこく頼まれ、結局、ま、試しにでも撮ってみるかという気になった。それに、フィルム代も現像の代金も払ってくれると言うし。もちろん、僕は地下室に自分専用の小さな暗室を持っているので、現像の費用などたいした額にはならない。ボブは、撮影とかの時間の分のお金も僕に受け取らせようとさえしたが、これはどうしても受け取るわけにはいかなかった。そもそも、ちゃんとした写真が撮れるかどうかすら分からないわけだから、なおさら。ボブは、クリスタルに都合を確かめ、後で知らせると言っていた。

その2日後、ボブから電話が来た。

「あのな、正直言って、クリスタルはあまり乗り気じゃないんだ。だが、でも、やってみるとは言ったよ。前に、彼女の誕生日に写真撮影をプレゼントしてあげた時にも、同じトラブルがあったんだ。嫌がってね。でも、あの時も、撮影が終わった後は、悪くなかったわって言ってたし。ちょっと恥ずかしがり屋なんだよ」

「ポラロイドはどうなんだ? それを買って、自分で好きなように彼女を撮るっていうのは? 君の前だったら彼女も恥ずかしがらないと思うけど?」

「いや実際、それはすでに試してみたんだ。だけど、俺って、ことカメラになると、不器用で。暗すぎたり、明るすぎたり、レンズの前に親指出してたり、後はまるでダメだったり。俺はナイスな写真が欲しいんだ。高品質って言うか。分かるだろう?」

「まあでも、俺も、どのくらいできるか自信がない。でもできるだけのことはするよ。・・・で、いつ頃、撮影したいんだい?」

「ああ、そいつはクリスタルに任せるつもりだ。今週中に、彼女にお前の方から電話してくれないかな? そして日時を決めて欲しいんだ。俺の方は、いつでもどこでもオーケーだ」

で、電話を切ったと。僕は考えた。そもそも、ちゃんとした用具を持っていたかなあと思った。なんてったって、僕は、山に車で出かけ、木々の写真を撮るのには慣れているけど、ポートレートの仕事はしたことがなかったし、そもそも、どうするかも知らなかったのだから。

次の日、近くの写真屋に行った。助言を求めるため。で、結局、200ドル。照明機材一式、反射パネル、それにポートレート照明とメイキャップに関する本を抱えて、しんどいけど車に運んでいたわけだ。俺ってば、何でこんなことしてるんだ?

水曜日、ボブの家に電話した。クリスタルが出た。

「もしもし、クリスタル? マイクです。僕が電話するってボブから聞いてると思うけど」

「ああ、ええ」 嫌がってる感じが声に出てた。

「あ、ちょっと聞いてね。もし、やりたくないなら、やらなくていいんだよ。実際、僕もちょっと困ってるんだ」

「ホント?」 今度は興味を示してる声の感じ。「また、どうして?」

「何と言うか、自分でやってることに自信がないって言うか。僕は高校の時から写真を撮ってるし、カメラも上手いと思っている。でも、この種のことにはあまり経験がないんだよ。たいていは、自然の風景とかそういうのばかりだったから」

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