51_discovering
こんなことになるはずではなかった。本当に。まったくひとかけらも意図していなかった。でも、意図することと実際に起こることが、とても違ってしまうことはよくあることだよね?
ちょっと聞いてほしい。僕は出張に出て、仕事を済ます、それしか考えていなかった。仕事を終えたら、家に戻って、元のノーマルな生活をしたかっただけだった。今は、ノーマルというのがどういうことなのかすら分からない。それに、僕が何を言おうとも、今となっては、元の自分に戻ることすらできないと思っているのは確かだ。
僕はマッチョと言われる人間ではない。そんなことは一度もなかった。その類のことを進んで認めたがる人はいない(少なくとも僕はそうだ)。でも、分かる通り、僕はそういうマッチョ的なところがまったくない人間だった。体は小さいし、筋肉もない。僕の興味は、スポーツのような伝統的に男性的と思われる趣味とは、大きく、大きく逸れているのは確実だ。スポーツみたいなことには全然、僕の興味をひかない。僕は、男っぽい理想像についてみんなが考える存在では全然ない。僕が言いたいのはその点。
でも、マックとフランクはどうだろう? まあ、ふたりは僕とは対極にいる人たちだとだけ言っておこう。だから、僕たちが重要なプレゼンをした後、ふたりが僕を誘って遊ぼうと言ってくれた時の僕の驚きを想像してみてほしい。僕は何かたくらみがあると思うべきだったのだろう。……特に、ふたりが、もっと飲もうとマックの泊まっているホテルに僕を誘ったとき、そう思うべきだった。でも、僕はすでに少し酔っていたし、事態の飲み込みが少し遅くなっていたのだと思う。
「ちょっと思い切って、女の子みたいに着飾ってみなよ」 とマックが言った。フランクも、激しく頷き、同じことを言った。女物の服なんてないじゃないかと言うと、マックはバッグの中から、ドレスから何から一式、全部そろった衣服を出したのだった。この時、これはまずいぞと思うべきだった。つまり、これは、単にその場の思い付きの悪ふざけなんかじゃないぞと思うべきだったのだ。でも、さっきも言ったように、僕は酔っていたし、こういうタイプの男たちとある種の友達関係になれて、本当に、本当にワクワクしていたのは事実だった。なので、(マックにしつこく言われて)脚や脇の下の毛を剃った後、僕は女物の服を着たのだった。
バカなことをしているなと感じたのは確かだった。ドレスを着た男なのだから。でも、それと同時に、ふたりが僕を見る目つきを見たとき、そして、彼らの目に浮かぶ表情が何を意味しているかに気づいたとき、自分がとてつもなく強くセクシーな存在になったように感じたのだった。その後、どういう展開になったのかすら、はっきりしないけれど、気が付いたときには、着ていた服は消えていた。そして、僕はマックの上にまたがって、彼の太いペニスの上に乗り、口にはフランクのを咥えていた。僕は、まるで何かに憑りつかれたようになっていた。
その週末が明けるまでの間、僕は、セックスの大竜巻にもみくちゃにされたようなものだった。どの行為でも、僕は女性としてふたりの間に挟まれていた。そして、そのさなか、突然、僕は自分に男っぽいところがない点に意味を見出したのだった。でも、それ以上に、そういう僕の性質を、僕はそれまで欠点と認識していたのであるが、その瞬間、これは欠点ではなく、強さへと変化したのだった。あの週末のある時点で、僕は自分の進む道を決めていた。その瞬間は、僕の人生の転換点であり、僕の心が数えきれないほどの多くの可能性へと開かれた瞬間だった。もちろん、その可能性のいずれにおいても、僕は男ではない。ひょっとすると、それまでもずっと僕は男ではなかったのかもしれない。