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「ダニー?」 と自信なさそうな声がした。「ダニー・ギブンズ? あなたなの?」
ダニーはその女性を無視しようとしたが、すぐに、彼の素肌の腕に手で触れられるのを感じた。彼は振り向き、返事した。「こんにちは、レズリー」
「まあ、なんと。あなただったのね?」 ブロンド髪の小柄がレズリーが言った。「話しは聞いていたけど、本当じゃないと思っていたわ! 何があったの?」
ダニーは深くため息をついた。「ちょっと……失礼なことはしたくないんだけど、でも……」
「あっ、本当にちっちゃくなってるのね? 今はゲイなの? それとも……自分のことはどう呼んでるのかしら? ストレートな女性? レズビアン? まあっ! あなたのおっぱい、あたしのより大きいじゃない!」
「あたしは……ねえ、ちゃんと聞いて。話せば長くなるわ。いい? 込み入った話なのよ」とダニーは言った。ダニーは話したい気持ちなどほとんどない。元妻が自分はレズビアンなので女性化してほしいと言い、彼がそれを許したこととか、ようやく変身が完了すると、元妻は彼が彼女を満足させられる男ではなくなったという理由で、彼の元を去っていったとか。
「マジで言ってるの? あたしには説明する価値がないと思ってるの? あなたがあたしと別れたとき、あたし、あなたがオカマか何かに違いないと思っていたわ。でも、あなたがここまで逸脱した人だったとは思ってなかったのよ」
ダニーは彼女の最後の言葉がアイロニーっぽいのを聞き逃さなかった。特に、今はふたりともヌーディスト集会にいるわけだから、レズリーもじゅうぶん逸脱した人ではないかと。だが、彼は口論することはやめた。「あなたの言う通りよ。あたしは根っからのオカマ。逸脱した人間。どう思ってもらってもかまわないわ。だから、いい? あたしは向こうに行こうとしているの。……分かる?……あなたから離れたいの。あなたに再会できてよかったわ、って言えたらどんなにいいだろうって思ってるの」
ダニーはすたすたと歩き始めた。背後でレズリーがつぶやくのがはっきりと聞こえた。
「イヤな女!」