fem-55-a_brothers_revenge
シルビアは両手に持ったバッグを煩わしく思いつつも、ぎこちない手つきで鍵をドアに挿しこんだ。国を横断する長いフライトの後で、くたくたに疲れていた。ゆっくりと熱いシャワーを浴びたい。今は何よりそれを求めていた。玄関ドアを開け、夫のイアンと一緒に住んでいるアパートに入る。2か月間という長期の出張だったけれども、居住空間が、出張前とまったく変わっていないのを見て、彼女はホッとした。
バックを床に降ろし、玄関ドアを閉め、コートを脱いだ。コートを近くのラックに掛け、長い髪の毛に手を走らせ、指ですいた。寝室へと向かいながら、シャツのボタンを外し始める。だが、廊下に出た途端、彼女は、物音を耳にし、凍りついたように立ち止った。その音は間違いようがなかった。セックスの音だった。
その音に導かれるように寝室の前にたどりつき、シルビアは一度深く息を吸って、ドアを押し開けた。不快さを表す言葉は10以上は頭に浮かんでる。少なくともそのひとつを、浮気している夫に投げつけるつもりでいた。だが、ベッドの上にいるふたりを見て、シルビアは言葉を失ってしまった。黙ったまま、シルビアは弟のアレックスを見つめた。イアンの太いペニスの上にまたがっている弟を。
もちろん、このアレックスは最後に見た時とは全然変わってしまっていたが、完全に、アレックスだと分かる。その長い髪の毛、女性的な臀部、そして柔和な表情。生れた時からアレックスのことを知っているシルビアにとって、彼のことを見間違えることはない。
「な……何を……」 シルビアは何とか言葉を出すことができた。
アレックスは振り向き、邪悪そうな笑みを浮かべて言った。「あっ、姉さん。前に言ったよね? いつか仕返しするって」
シルビアは自分の世界が崩れて行くのを感じた。彼女は、心の奥では、今の心の痛みを自分が味わうのも当然だと思っていたからだった。アレックスの復讐は、嫌悪感に満ちているものの、完全に正当だと言えた。シルビアは子供のころから、女性的な弟をからかって楽しんできたのだった。その頂点が、あの恐ろしいほどの悪だくみ。彼女はアレックスを言いくるめて、学校のスター選手であるクオータバックの男がアレックスとエロティックなデートをしたがっていると言ったのである。だが、アレックスが指定された場所に行くと、そこにいたのは、10名以上の他の学生たちだった。みんなアレックスをからかおうと待ち構えていたのだった。アレックスは決してその日の出来事のことを忘れなかった。そして、卒業式の前夜、彼は姉であるシルビアにいつか復讐してやると誓ったのである。
シルビアは自分のベッドの上にいるふたりを見つめながら、アレックスが誓いを果たしたという事実を否応なく突きつけられたと思うのだった。