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An understanding 

62_An understanding

美しい……この言葉は彼女の姿、彼女の身のこなしを表すのに、あまりに物足りなく思える。天使のよう。ゴージャス。完璧。これらの言葉の方が良いが、それでも、物足りない。僕は彼女を見かけた瞬間、圧倒された。

その日はいつもと同じ日だった。日常そのもので、何ら目立ったことがない日。明るい陽が射し、鳥たちがさえずる。その一方で、僕は、いつものように、世俗的なことに苛立ち鬱屈していた。そんなことは、大きな目で見れば取るに足らないことなのに。僕は心配性の人間で、いつも不安感でいっぱいだった。僕はまさにそういう人間なのである。

僕は公園のベンチに座り、できるだけ自分の置かれた環境を楽しもうとしながら、サンドウィッチを食べていた。ふと見上げると、彼女の姿が目に入った。歩道を歩いている。彼女は特に目立った服装をしていたわけではない。縞柄の服とスタラップの黒いハイヒール。でも、彼女を包むその服は、彼女の体の曲線をすべて露わにして僕の目を捕らえた。魔法のように。

僕は、見つめていたことを恥じて、目を反らした。どのみち、彼女のイメージは僕の網膜に焼き付いていたから、目を反らしても忘れることはない。いや忘れられない。ブロンドの髪。あのミルクのように白い滑らかな肌。あの鋭い表情。彼女は完璧だった。甘利にも多くの点で完璧だった。

目を上げると、僕と彼女の目が合った。僕は視線を外したい衝動に抵抗した。彼女が僕のような人間に興味を示すことなどありえないのは知っていた。彼女なら、僕なんかよりももっとずっと良い人がふさわしい。僕と彼女は異なった生物種に属していると言ってもいいだろう。だけど、僕は視線を外すことができなかった。

彼女の唇が少し歪み、半分微笑んでいる顔になった。そして、彼女はしゃがみこんで、靴のストラップを直し始めた。僕はぎこちないし間抜けなことをしてるとは思いつつも、彼女に微笑みを返した。でも、そういうことは、誰でも可愛い女性と目が合った時にすることじゃないだろうか。誰でも微笑んでしまう。そして、期待してしまう。

そして、その時、僕はソレを見たのだった。彼女は下着を履いていなかった。彼女のスカートの下に潜む驚きの存在を隠すものは何もなかった。ソレはまるで磁石のように僕の視線を惹きつけた。彼女の美しい顔から視線を外すことが難しかったのと、まったく同じように、彼女のペニスから視線を外すことは難しかった。いや、それよりも難しかったと言える。

みぞおちのあたりがゾワゾワする感じがした。彼女は僕が見たことに気が付いていたに違いない。むしろ、彼女は僕に見てほしがっていたと感じた。そして、僕は目をそらすことができなかった。彼女の男性の証拠すら美しいと思ったし、それは、まったく男性的な姿ではなかった。それは、小さく、柔らかく、彼女に完璧にマッチした姿をしていた。

僕はようやくソレから視線を外し、再び彼女の顔に目を向けた。僕の顔は、前よりも笑顔になっていたし、それは彼女も同じだった。僕も彼女も分かりあった瞬間だった。ふたりとも理解しあった瞬間だった。


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[2017/11/26] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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