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Fucked up 

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「そのポーズ、いいわよ」 カメラマンのカルメンが言った。彼女は年配の女性で、黒っぽいショートの髪と、刺すような青い瞳をした女性だった。「その格好で!」

あたしは溜息をつきたい衝動を抑えた。疲れていたし、寒いし、お腹も減っていた。何より、今すぐ自分のアパートに帰ってパジャマに着替え、面白そうな本とワインを1本抱えて、ごろりと横になりたかった。でも、撮影は重要なこと。この種の仕事がなければ、そもそも、あたしには帰るべきアパートすらないだろう。本も買えないし、ワインも買えないし、多分、パジャマすら買えないだろう。

だから、あたしは「セクシー・ルック」を顔に張り付け、カメラを睨み付けた。でも、そうしつつも、どうして自分はこんな状況に嵌りこんでしまったのだろうと思いを巡らしていた。

考えてみてほしいのだけど、あたしは、結構おカネを稼いでいるの。映画スター並みのおカネではないのは確かだけど、普通の仕事をしている平均的な人に比べたら、すごい巨額のおカネと言えると思う。それに、あたしには、あたしのことを愛してくれる何千人ものファンがいる。ファンたちは、あたしが、アレやコレやいろんなセクシーなことをするのを見るためなら、汗水たらして稼いだおカネを喜んで貢いでくれる人たち。外から見たら、これって素晴らしい人生と思えると思うし、あたしも不平を言うべきではないというのも分かってる。本当に。

でも、最近、ますますそう思うようになっているんだけど、そのおカネって、ポルノ・スターでいることに伴う頭痛の種と、本当に釣り合うのかなって疑問に思うの。巨額のおカネ? でも、そのおカネのうち、かなり大きい割合が、このカラダを得るための医療措置に消えちゃうのよ。ファンから愛されている? でも、ファンのみんなにとっては、あたしは結局、動いてしゃべる玩具であって、自分たちの家の暗くて狭い部屋の中で楽しむのが一番の存在でしょう? ファンたちは、あたしのことを好きと、あたしのような女が好みだと公言するのは恥ずかしいのよ。

時々、そういうことを思って、落ち込むの。自分は綺麗だと分かっている。実際、今のような女になるために、たくさん時間を使ったし、努力もしてきたし、おカネも使ってきた。それに男たちがあたしのことを魅力的だと思っているのも分かっている。あたしが世界で最も人気があるトランスジェンダーのポルノスターのひとりだという事実自体が、その証拠。でも、男の人って、あたしの脚の間にあるモノを見つけると、これ以上ないってくらい素早くあたしとの関係から逃げちゃうものなのよ。その人にとっては、あたしの脚の間にあるアノ小さなモノって、契約違反だとなるの。

そのタイプの男の人に加えて、もうひとつ、あたしのような「女」だけが好きな男もいるわ。正直、どっちのタイプが悪いかは分からない。そのタイプの男たちにとっては、問題はセックスだけ。その人たちにとっては、男と女が何かを分かち合って、関係を育てるってことは全然念頭にないの。頭にあるのは、いいカラダをしているシーメールの女とヤルことだけ。この手の考え方ほど、あたしは自分がモノ化されてると感じることはないわ。だから、あたしは、カメラの前ではおカネのためにセックスをする。だから、あなたたちとは、「いいえ結構です」と思うわけ。

多分、あたしが言おうとしてることは、こういうこと。確かにあたしは幸せだし、自分に自信をもって生きている。これがあたしの仕事だから。情緒不安定で、神経質なポルノスターなんて、誰も見たいと思わないもの。でも、あなたが、暗い部屋の中であたしを見て、あたしが何もかもちゃんとやってるように見えるからと言って、本当のあたしが本当にちゃんとやってるということにはならないの。本当のあたしは、この世の中のすべてと同じくらい、ぐちゃぐちゃなのよ。



[2017/12/07] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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