2ntブログ



Self-improvement 

fem_station_62_self_improvement.jpg


62_Self improvement

僕は、彼らの視線に気づいていないふりをしようと、石鹸に目を落とした。あの、僕を見るときの男たちの変な目つきに気づいていないふりをしようと。そもそも、それを認めたいとすら思わない。とても気になって仕方がないから。ロッカールームでシャワーを浴びながら、ストレートだと思われている男たちにじろじろ見られること。こんなこと、無視したかった。でも、あからさますぎる視線だ。恥知らずすぎる視線。とても無視なんかできない。

それに、男たちの視線を浴びてしまうことにどうにか慣れたとしても、そもそも、どうしてそうなるのか理解できない。僕以外の世界が、実は一夜にしてみんなゲイになっていて、たまたま僕だけ、それを知らせたメモを見落としてしまったのだろうか? 街を歩くと、いつも、誰か男にひゅーひゅーと変な声をかけられる。バーに行けば、いつも僕をナンパしようとする男が現れる。そして、シャワーを浴びれば、いつも、何人もの男たちが僕の一挙手一投足にいやらしい視線を向けてくる。本当に悪夢の中を生きているみたいだ。

一度ならず、僕はこの問題の根っことなっている原因を辿ろうとしてきた。いつから、みんなは狂ってしまったのだろう? そして、その理由は? 僕が思いついた唯一の答えは、僕が新しいエクササイズのプログラムを始めたときからのように思われるということだ。

正直に全部話してしまおう。僕は以前は太っていたのである。病的な肥満というわけではなかったが、デブと呼ばれる状態だったのは本当だ。どんなに頑張っても、体を健康的な姿に変えるのに必要な意思の力を維持することができなかった。なので、僕は精神科医をしている友人のトムのところを訪ねたのだった。トムは催眠療法をかじっており、僕の問題は無意識領域にあるのかもしれないと言った。トムに相談してから2週間ほど行ったり来たりを繰り返したけれど、結局、僕は彼の治療を受けることに決めた。

驚いたことに、その治療は本当に成功したのだった。本当に、びっくりするほどうまくいった。気が付いたときには、何キロも溶けてなくなっていた。(トムが処方した)特殊な薬剤をちょっとは飲んだけれど、でも、それを除けば、治療の大半はハードなエクササイズだけだった。この効果に僕はとても満足し、何度も彼のもとに通い続けた。

その後、トムはちょっと「仕上げ」の手術をすべきと言ってきたけれど、その頃までには僕は彼を完全に信頼しきっていた。僕は彼と手術内容を具体的に話し合うことすらしなかった。僕が容姿について自慢したいからという感じではなく、むしろ、良い容姿についてある種の好みがあって、それを追求したいからという感じだった。もっと、見栄えが良くなりたかったし、是非ともそうなりたいと思っていた。僕にはおカネがあったし、問題は何もないと。

トムは友人のひとりに僕を紹介した。その人は胸部へのインプラントから、顔のわずかな整形に至るまでの一連の手術を行うべきと提案してくれた。トムはその人を信頼していたし、当然、僕も信頼した。僕は、何も考えずに彼の提案に従い手術を受けた。そして、とうとう、すべての処置が終了した時、結果を見て僕は大喜びした。すべてが完璧に整っていた。それをさらに完璧にしようと、僕は何千ドルも費やして、新しい体と顔をよりよく見せるための新しい服装を買いそろえた。タイトで露出気味の服なら、文句なしに購入した。

まさにその頃から男たちが僕に視線を向け始めたのだった。僕のことをじろじろ見始めたのである。多分、この世の中には、僕が思っていたよりもゲイの男たちがたくさんいたというのが真相なのだろうと思う。ただ単に、以前の僕は彼らの関心を惹かなかったということなのだろう。デブの男はその価値がなかったと。でも今は? 今は誰もが僕のことを欲しそうな目で見てくる。そして、正直言うと、その視線がそんなに嫌いではない。実際、僕自身ちょっと興味もあって、それは否定できない。何を言いたいかと言うと、ほとんどすべての男たちが僕のことが気になっているようだとすると、世の中には驚くほどゲイの男がいるということになるわけで、それだけたくさんいるということは、それなりに良いことがあるからなのだろうと。だから、ちょっと興味があると。間違っているかな?


[2017/12/09] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する