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Taking her place 

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「ちょっと、アダム?」 とあたしはバスルームの中から呼びかけた。「あなたにお話ししたいことがあるの。見せたいものがあるというべきかも。でも、約束してほしいの。卒倒しないって」

「卒倒する?」 とアダムが訊き返した。ドアの向こうなので声がくぐもっている。「どうして僕が卒倒するの?」

「いいから、約束して」

「いいよ、約束するよ。で、お願いだから、何が起きてるか教えてくれるかな?」

あたしは気持ちを落ち着かせようと深呼吸した。無駄だった。心臓が飛び出しそうになっているのを感じながら、ドアのノブを回し、バスルームから出た。素っ裸で、体のすべてを見せたまま。あたしはアダムの顔を見ることができなかった。

「こ、これって……一体、どうなってるんだ?」 アダムの声はかすれ声で、ほとんど聞こえないほどだった。顔を上げ、彼の顔を見ると、彼はまさにあたしが予想していたところを見つめていた。あたしの脚の間の部分。「ぺ、ペニスがある……な、なぜペニスがあるんだ。一体……ど、どうして?」

「説明するわ……」 とあたしは呟いた。

ふたりの目が合った。一瞬、彼に殴られると思った。あるいは彼が逃げ出すと。あるいは、叫び声をあげると。あたしは、すでに何百万回と頭の中でこの状況を予行演習していた。だけど、想像したシナリオは、どれも良い結果にはならないものばかりだった。でも、長い沈黙の後、彼はあたしを驚かせた。予想に反して、落ち着いた声で、「うん、いいよ。話してくれ」と言ってくれたから。

「弟のキースのことは覚えている?」 彼は頷いた。「それで、2年位前だけど、高校の時、SAT(大学進学適正テスト)を受ける前の頃、あたしたちあることを思いついたの。
キースは昔から頭が良かった。一方、あたしの成績がどんなだったかは、あなたも知っているでしょ? とにかく、キースはあたしの代わりにSATを受験することに同意してくれたわけ。そして、それはうまくいったわ。キースに女装させて、あたしそっくりに見えるようにするのは、そんなに難しくなかった。ふたりともそっくりだったから。背格好も何もかも」

「それで?……」

「あたしが……あたしはキースなの」 告白した。声の調子が変になっているのを感じた。「というか、かつてキースだったと言った方がいいかもしれない。ね、姉さんは、高校を出るとすぐ、消息不明になってしまったの。誰か男の人とヨーロッパに行ってしまったらしい。そこで、あたしが……何と言うか……姉さんの人生を乗っ取ったの。姉さんの人生はあたしの人生よりずっと良かったから。姉さんはいつも周りのみんなの人気者だったし。一度、姉さんの代わりになる味を味わったら、ちょっと……そのままで生きていこうかなと思っちゃって……」

あたしは目を背けた。「嘘をつくつもりじゃなかったのよ。……いえ、嘘をついてきたわね。でも、嘘をつきたくてついてきたわけじゃないの。あなたと一緒になるときまでには、あたし……」

「どこか変だなって分かっていたよ」とアダムは言った。「高校の時は、君は……いや、彼女はだな……彼女は僕とただの友達でいたがっていた。その点ははっきり言ってたんだ。でも、高校を出たら何もかも急に変わって……」

「ごめんなさい。あたし……あたし、もうこれ以上、嘘をつきたくないと思って……」

「でも、君がクリスティンじゃないとして、何て呼んだらいいんだろう?」

「わ、分からないわ。ここまでになると思っていなかったから。ずっと姉さんのままでいようと思っていたから……」

「でも、君はもう彼女になる必要はないよ。君は君のままでいればいいんだよ。それがどんな形であれ、そのままでいいんだ」



[2017/12/09] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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