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心が望むものをすべて 5 (3) 

普通の生活に戻ること。最初、これはとても大変だった。本当にキツかった。最初の血液検査と、それに続く検査の結果が送られてきた。すべての感染症に関して陰性だった。少なくとも、この点については、ありがたいと感謝した。それに、家に戻ることも気にならなかった。少なくとも、あのレイプに関しては、それが気になって家に帰れなくなる、という風にはならなかった。依然として家は家だし、そこで生活し続けるのだから。自分がレイプ犯の犠牲者になってしまったこと。これには自分を咎める理由がたくさんあったけれど、それをくよくよ考えるのは嫌だった。起きてしまったことは仕方がない。

トラウマとなったのはダニーのことである。今回のひどい事件のせいで、私は何より価値を高く置いていた宝物を失ってしまった。あれ以来、ダニーからの連絡はなかったし、彼女がどこで何をしているのかも知らなかった。彼女のいない家は、空っぽで、荒涼とし、寒々としたところに思われた。時々、夜に、あてもなく部屋から部屋を渡り歩き、心の空白を満たすために彼女が残したかすかな思い出を拾い戻そうとすることがあった。その心の空白を埋めるため、外に出て、その場だけの恋人を見つけようなどといった考えには、吐き気しか感じられなかった。

髪をセットしにレキシのところに出かけた。いつもしていることで、私のルーティンの一部となっていることだった。レキシは、私の異変を感じ取った。そして私は全部包み隠さず彼女に話した。牧師、バーテン、そして美容師。この人たちは、人の話を聞いてくれる。レキシはとても同情してくれた。とても現実とは思われないような出来事が連鎖し、悲劇的な結果になってしまったのね、と。私があのような暴行を受けたことに激しく嫌悪してくれたし、私が、ダニーを失ったことは別として、事件のショックにもめげずに生活を続けていることを、わが事のように喜んでくれた。ただ、ダニーの件についてのレキシの反応は、私が思っていたのとは少し違った。確かに、私に同情はしてくれたが、どことなく、ダニーが失踪したという知らせは、彼女にとって、まったくの驚きというわけではなさそうに思えた。

ヘアセットを終え、椅子から立ち上がったとき、偶然、セリーヌの姿が見えた。彼女が私を見かけたのと、ちょうど同時だった。ハッと息を飲むほど美しい、あのアフリカ系の彼女は、私を見るや、針を刺されたかのように、ぷいっと私から目を背けたのだった。

でも、その時のセリーヌの眼差しは、ほんの一瞬ではあったが、多くのことを語っていた。もし、セリーヌが目からナイフを撃ち出せたとしたら、私はその場でめった裂きにされて死んでいたことだろう。私は、注意深くセリーヌの持ち場に進んだ。恐らく、悲しい対話が待ち構えているだろうと、でも、その対話はしておかなければならないものだと思った。それに備えて、心を鋼で武装しながら、進んだ。

「私に話しかけないで!」

セリーヌは、取るに足らない仕事を忙しそうにしつつ、きつい口調で言った。

「あなたなんかと話したくないわ!」

「どうしても話しなくちゃいけないの・・・私たちのどちらかが、お話したくなくても、しなくちゃいけないの。私は、ダニーが無事だと、どうしても知りたいの」

セリーヌが、急に振り返って、私と面と向かった。瞳にも声にも、冷たい怒りが満ちていた。

「いいこと? ダニエルはあなたにあんなに尽くしたのに、あなたはあんなことをしたのよ。なのに、のこのこ私の前に来て、彼女が無事か、などと訊いている。彼女が無事なわけないじゃないの。ダニエルは、永遠に、無事の状態には戻れないわ。あなたのせいで。彼女は、私のことはまだ信頼してくれていると思うわ。でも、彼女が誰か他の人に喜んで感情をゆだねるとしたら、今は、私を信頼することしかできないでしょうね。今ここで、私が、あなたの不潔なお尻を蹴っ飛ばさないのは、私がアレクシスを尊敬しているから、ということだけは心得て頂戴!」

私は、暴行事件についてレキシに話したことを繰り返した。それに、警察が、ダニーは危険な状態にいると考えている理由についても話した。

「私は間違いを犯したわ。だけれど、ダニエルに危害が及ぶことだけはどうしても避けたいの」

セリーヌは、一瞬、うんざりした顔で私を見た。ほとんど知覚できないほどだが、顔が和らいだように見えた。

「そのことなら、心配する必要はないわ。私が見ているから」

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