
64_a new life 「新しい生活」
いつものカラーが首に巻きついている。それにつながっている紐がいつもより少し重い気がする。サイズに合わないブラ。そのストラップが肩に食い込み、自分がブラを必要とする体になっていることを絶えず私に思い出させる。ブラ以外は素裸。そういう姿でいることを忘れようと思っても無視できない。それは、アヌスから抜け出ようともがく玩具の太さを無視できないのと同じ。それは馴染みのある感覚だけど、馴染みがあるからと言って、その恥辱感が薄れるわけではない。
ご主人様が紐を引き、私は顔を上げた。笑顔で私を見る。その笑顔は持ち主が従順なペットに向ける種類の笑顔。「今日は良い子でいたな。ご褒美に値するな」
私はここで返事をするほど分別がないわけではない。じっと黙り続ける。そのおかげで、かえって今日一日の恥ずかしい出来事について考えることが簡単になる。私はほんのひとかけら残っている自尊心を胸に出社した。確かに私は変えられてしまった。それまでの定番服であったスーツの代わりにドレスを着て出社した。元の私の従業員で、私のことを認識した者はほとんどいなかっただろう。しかし、私を笑う者もいなかったし、私のことをじろじろ見る者もいなかった。彼らにとって、私は、まさに私の服装が示す通りの存在だったのである。つまり、今日一日の仕事にとりかかろうとしているキャリアウーマンだと。
ああ、本当にその通りだったらいいのに。彼らは、私が首に巻いているカラーが何のためにあるのか知ることはできない。彼らは、私が、スカートの中、アナル・プラグをあそこに心地よく入れていることを知らない。それに、彼らは、私の男らしさを示すものとして唯一残っているモノをソング・パンティの中に隠していることも知らない。彼らは私がまさにこの会社の持ち主であったことも知らない。彼らは、私が元の部下に奴隷化されたことを知りようがない。彼らは、その元部下が私の身分も自由も、そして、男性性すらもひとつ残らず奪ったことを知らない。
私は彼を見上げ、作り笑いをした。彼は私が嬉しそうにしているのが好きだ。私が笑顔を見せたお返しに、彼はスラックスのチャックを降ろし、立ち上がった。彼が何を期待しているのか私は知っている。そして私はためらうことすらしない。
彼の太い男根を唇で包みつつ、私は昔の自分の記憶を心の中の暗い片隅の奥へと追いやった。あの時の私は存在しないのだ。彼はずっと前に死んでしまったのだと。