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64_a proper boy 「行儀のよい男の子」
「さあ、おいで」 とサオリーズは股間から突き出たディルドをさすりながら言った。巨大で、赤いディルドで、彼女の腰にストラップで固定された皮具につながっている。「これが欲しかったんでしょ? これのために、一生懸命、頑張ってきたんでしょ?」
ケリーは、どうしてよいか分からず目をそむけた。ふと、自分の格好、自分の女性化した体のことが意識の前面に浮かんできた。サオリーズが言ったこと。それは本当だ。彼は、この姿になるために驚くほど一生懸命に頑張ってきたのである。何時間もジムで鍛え、何万ドルも手術に使い、厳密にダイエットを守ってきた。それらすら氷山の一角に過ぎない。ホルモン治療も受け、数えきれない日々を化粧とヘアスタイルを完璧なものにするために頑張ってきたし、より女性的な身のこなしを学ぶために頑張ってきた。
でも、それら努力はすべて何のためだったのだろう? お金持ちの妻をつかまえるため? 彼女に養ってもらえるように? 彼女にセックスの時に、この自分の体を使ってもらえるように? 彼女の腕にすがりつく自分を、彼女が知り合いたちに自慢して歩いてもらえるように? それらすべて、とても間違っているように思えた。でも、世の中はそういうふうになっている。そういうふうにしなければ、彼のような男は少しも前に進めないのだ。
彼は作り笑いをしつつ、言った。「もちろん」 そしてドレスのチャックを降ろしていく。ドレスはするすると床に落ち、床にくしゃくしゃに丸くなった。そこから足を踏み出す。ハイヒールのかかとがタイル張りの床に当たり、カツン、カツンと音を鳴らした。「これこそ、あたしがずっと欲しかったものなの」
サオリーズは彼の微笑みを受けて、レザー張りのカウチに座った。巨大なディルドが天井を向いてそそり立っている。彼女はその根元を握り、安定させながら言った。「じゃあ、おいで。ママを待たせちゃだめよ」
ケリーはためらう気持ちをあえて表すことはしなかった。偽の笑みを顔に浮かべたまま、彼女の方に這い寄った。彼が彼女に背を向けたときだけ、彼の顔から作り笑いが消える。そして彼は彼女の上にまたがり、ゆっくりと腰を沈めていった。
それは簡単に中に滑り込んできた。なんだかんだ言っても、彼の体はすでに十分、その準備はできていたのだ。他のすべての行儀のよい男の子たち同様、彼もまた、自分の立場をちゃんとわきまえているのである。