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A small surprise 「小さなサプライズ」 

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64_A small surprise

彼女がいつからそこに立っていたのか、あたしたちを見ていたのか分からない。ドアが開く音が聞こえなかった。それほど夢中になっていたということかも。

「それで」 彼女の声に恐怖心が高まった。「あんたたち、ここで、こんなことしてたわけね?」

氷のように冷たい水をバケツ一杯、頭から掛けられた感じだった。

「あんたこそ、いったい誰よ?」 とレアが訊いた。レアはあたしの脚の間にいて、お気に入りのディルドをあたしのお尻に挿し込んでいたところだった。もちろん、あたしもレアも素っ裸だった。「それに、あんた、あたしの部屋で何しているの? 誰が入っていいって言ったのよ?」

「私はチャドの彼女よ」 とサマンサが叫んだ。

「チャドって誰よ?」 とレアが声を荒げて言い返した。あたしはベッドや床を透過して消え去りたかった。気まずさがどんどん増してくるこの状況から逃げたかった。

サマンサは引きつった笑い声をだした。もちろん、その笑い声は嬉しさとか面白さとは関係がない類の笑いだった。「あんた、彼の名前すら知らないの? なのに、それを……そんなものを彼の中に入れてる。彼が誰かも知らないのに」

「あんた何なのよ……ほんとに……」 レアはそうつぶやき、あたしに顔を向けた。「どういうこと、ゾーイ?」

「ゾーイ……。あんた、ここではその名前で呼ばれてるの?」 とサマンサが言った。

「ぼ、……ぼくは……」 混乱した頭で考えをまとめることができず、あたしは口ごもった。「分からない……」

「もう、あんたは黙っていて」とサマンサがさえぎった。「私が代わりに説明するから。ここにいるチャドは…」と彼女はあたしを指さした。「彼は、たぶん、故郷にガールフレンドがいることをあんたに言わなかったんでしょう? 彼は野球選手になる奨学金でこの大学に入ったことも、あんたに言わなかったんでしょう? それに……」

あたしは何とか勇気を振り絞って、叫んだ。「お願い、もうやめて、サマンサ! あたし……あなたに言うべきだったわ……」

「あんたが、シシーだったと?」

「あたしが女の子だとよ! あたしはずっと前から女の子だったの。ただ……どうしたらいいか分からなくて……地元ではカムアウトできなかったのよ。ここに来るまでできなかったの。ほ、本当にごめんなさい……」

「ごめんなさい?」 とサマンサはあたしの言葉を繰り返した。「それってどういう意味よ? あんたは、最初の日から嘘をついてきたということ? 私たちが出会った最初から、嘘を? それで、あんたは、私にそれでもかまわないと言ってほしいわけ? そして、地元を離れてここに来たらすぐに、他の女と寝ていると。ごめんなさいと言えば、それで済むと思っているわけ? 最低ね、チャド。最低ね、ゾーイ。あんたが他に何と呼ばれてるか知らないけど、あんたって、最低!」



[2017/12/14] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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