マークの書斎のほこりを払い、掃除機をかけ終わるまで、1時間以上かかった。乱雑になっているわけではなかったのだが、いろいろな小物がたくさんあり、その一つ一つのほこりを払わなければならなかった。終わった時には、3時近くになっていた。夕食の料理をオーブンにセットする時間でもあった。
掃除道具を片付け、次にキッチンの仕事に取り掛かった。キッチンに入るとちょうど、トレーシーがガレージに面している入り口から入ってきた。トレーシーは僕を見るなり、笑みで顔をパッと輝かせた。その表情で、僕の姿に非常に満足していることが分かった。トレーシーは、両手に買い物袋を数個、それに箱も2つほど抱えていた。
トレーシーはその荷物を床に落とし、両腕を広げて僕に抱きついた。ねっとりとディープ・キスもしかけてくる。
「もう一度ステファニーになってくれることにしたのね。すごく嬉しいわ。今日は、この服を着たあなたのことを思って、一日中、興奮していたのよ。それに、あなたに着せる物も、お買い物してきちゃったんだから。きっとあなたも気に入るだろうって」
トレーシーはもう一度、僕にディープキスをし、両手で僕の体を触りまわった。
キスの後、いったん僕から離れ、僕の顔を見る。
「今日はお化粧していないの?」
「すみません。ちょっとしてみたんだけど、めちゃくちゃになってしまって。それに髪の毛の方も自分ではどうにもならなかったんです」
少し情けない声で答えた。トレーシーは僕の額にキスをした。
「いいのよ、オーケー。お化粧の仕方は、私が教えてあげるから。それに明日、髪をカットしに連れて行ってあげるわ。短くすれば、ケアも楽になるでしょう。でも、その前に、私の特別な女の子のために買ってきたものを見せてあげるわね」
トレーシーは、床に落ちてる袋や箱を拾いあげ、僕の手を引いて、彼女の寝室に連れて行こうとした。僕は手を引っ込めた。
「その前に、夕食をオーブンにセットさせてください」
「分かったわ。私の寝室で待っているから」
トレーシーは、もう一度、僕にキスして、キッチンを出て行った。料理をオーブンにセットするには2分ほどしかかからなかった。その後、僕は寝室に向かった。
寝室に入ると、トレーシーが最後の紙袋から品物を出しているところだった。僕の姿を見るや、手を前に突き出して言った。
「そこでストップして! その場で服を脱いで」
服を脱ぎ始めると、トレーシーは箱を持って近づいてきた。
「これがあれば、その下着を詰めた胸の代わりになるわ」
トレーシーが箱を開けると、中には、2つの本物そっくりの乳房があった。本物の乳房と同じで、固い乳首もちゃんと2つついている。トレーシーは、その1つを取り上げ、僕の右のブラジャーの中から丸めたパンティを取り出し、代わりに擬似乳房を入れた。予想外に、ぐっと重く感じ、驚いた。偽物だとは分かっていても、ブラの中に入れると本物のように見えた。
トレーシーは、左右両方に入れた後、両手で触って感触を確かめた。
「うん、なかなか良いわ。パンティを詰めているよりずっと良いし、本物みたいな感じもする。それにほら、これ。乳首を触ってみて。興奮して固くなってるように感じるわ。確かに、本物の乳房には負けるけど、そこを認めれば、今のところ、これが一番よね」
次にトレーシーは僕をベッド脇に連れて行った。そして黒いサテンのコルセットを取り出した。
「これ、何種類か買っておいたわ。これを使えば、女の子のような女性的な体の線になっていくはず。これからは、いつもコルセットをするように。男の服装をしている時も、必ずつけること」
トレーシーは僕の胴体にコルセットを巻きつけ、背中のレースを締め始めた。前にはフックとか、リングがあって、そこにレース紐を掛けるので、自分ひとりでも身に着けたり、脱いだりができる。トレーシーがぎゅっと紐を引くと、体の側面が内側に締め付けられのを感じた。お腹も平らになる。かろうじて呼吸ができる程度に締め付けた後、トレーシーは背中でレースを結んだ。