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64_Someone's got to do it 「誰かがしなければならない」
「ああ、ジミー、本当に彼女そっくりだ」とクリスが言った。
俺は腰に両手を当てて、ポーズを取った。「そう思うか?」
「あのじいさんには、誰に会ったか分かりっこねえ」
俺は微笑んだ。「ちょっと明らかな違いはあるんだがな。一つは身長だ。3センチくらい彼女より背が小さい。それに顔の特徴も、いくつか改良しなくちゃいけないところが残ってる。でも、全体的に見たら、これでほぼ準備はできたと思う。後は、『ケリーになる』ための知識を全部覚えれば完了だな」
「それ、しっかり覚えてくれよ」とクリスが一歩近づいて言った。彼は俺の腕に血圧計のベルトを巻き付けた。血圧計のベルトがじわじわ膨らんでくる。「完璧である必要はないんだ。彼は信じたがっているから。ケリーっぽいところだけ忘れないでくれ」
「分かってる。俺が言ってたのは、ケリーについての細かい情報のことじゃない。大まかな仕草とかのことを言っていたんだ。習慣と言うか、彼女の歩き方とか話し方とか。化粧のしかたとかな」
彼は俺の顔をちらっと見た。「その習得にはちょっと苦労するのは確実だぞ。顔は絵を描いたようにそっくりなんだけどな」
「分かってる。でも、ちゃんと習得してみせる。2週間もあれば準備できると思う」
クリスは何も言わなかった。黙ったまま、血圧など、俺の体の状態をチェックしていた。そしてしばらくした後、彼は再び口を開いた。「本当に彼に罠をかけられると思っているか? 自分の娘だぞ? 大丈夫か?」
俺は頭を縦に振った。「彼は娘にほぼ4年間会っていない。彼女が最後にどうなったか見ただろう? タイで側溝にうつ伏せになって死んでいた。腕には注射針。あれはまるで……」
「知ってるよ」
「俺が言いたいのは、彼女自身、こういうことをするのを望んでいただろうということ。あのじいさんが財産を放棄してしまう前に、誰かが、それは俺たちのものだと言う必要があるんだ。それが俺たちだっていいだろ? それに言わせてもらえれば、俺は最後までやったわけではない。俺は完全には体を変えていない。完全に変えちまうと、得点を上げる前に怖気づいてしまうからな。だから、そういう心配は心の奥のずっと奥にしまい込んでしまうんだ。もう、仕事は始まってるんだぜ。どういう形になるにせよ、もう始まってるんだ」
「分かってるよ」とクリスは言った・
「それで、俺のおっぱいは間に合うのか? それともプッシュアップ・ブラとかをつけなくちゃいけないのか?」
「あと2日ほどでできる。彼女と同じCカップだ」
「大丈夫だよな?」
「彼女のDNAを使ったんだ、トミー」 と彼は全部説明する必要があると思っている様子で説明した。
「トミーはやめよう。ケリーだ。これからは俺のことをケリーと呼んでくれ」