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64_Window dressing 「外見上の装飾」
人があたしの体のことをバカにするのを耳にする。あたしに面と向って何か言う人はいないけれど、侮辱はいつも向けられているのは知っている。肥満の女性でいることには、そういうことが当然のように付きまとってくる。
それよりも頻繁に、あたしは人があたしを扱う態度の違いに気づかされてきた。あからさまにイヤらしい態度をされたりはしないけれど、あたしが痩せていた時は、部屋に入ると、単なる無関心とは明確に異なる反応をされたものだった。当時、あたしは注目の的だった。みんなの世界の中心になっていた。そして、そんな自分があたしは好きだった。
それにあたしは、そういうふうに注目の的になることが当然とみなしていた。あの感じ……あの感じを味わえるなら、何でも差し出してしまうのに。
鏡の前に立ち、裸の姿を見る。だぶついた肉が見える。たるみのしわも見える。そして、この脂肪の塊。あたしは、この鏡に映っている怪物じゃないのよ、本当は。でも、みんなに、あたしは理想的な体をしていると納得させることはできないわね(デブ専の人になら別だろうけど)。
でも、あたしは幸せ。満足している。どうしてか、分かる? あたしが見ずに済んでることがあるから幸せなの。人があたしを見て、太った女性を見るから幸せなの。人が、あたしを見て、女の子のふりをしている太った男を見るわけじゃないから幸せなの。男性性の最後の部分のところにほとんど気が付かないから幸せなの。
結局は、あたしは自分が女性であるから幸せだと言える。それ以外の点は、ただの外見上の装飾にすぎない、と。