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Fitting 「お似合いの衣装」 

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56_Fitting 「お似合いの衣装」

「本当にするの? 本気で?」 ボクはティナが折れて、この状況からボクを解放してくれると願いつつ訊いた。

「もちろん、やるわよ。これはあなたが考えたこと。どうしてあなたがそんなに聞き分けない子みたいに言うのか分からないわ」

長年、ティナとボクは、性生活にロールプレイを取り入れて夫婦生活にスパイスを加えてきた。最初はとても単純だった。女子高生プレイとか警察プレイとか海賊プレイとか。まあ、よくある普通のタイプ。でも、1年ほど前、妻がランジェリー姿になったボクを見てみたいと言い出したのだった。そして、その時から、ボクたちはどんどん深みにハマっていき、ボクが寝室で女性の役以外の役を演じることが珍しいほどにまでなっていた。

そして、それがその程度でとどまっていたならば、それはそれで良かったと言えた。ボクとしてもその役割を演じることで完璧に満足していた。もっと言えば、いろいろな意味で興奮することだった。そういう興奮があるなんて、それまでのボクがまったく思ってもいなかったことだった。でも、ティナの場合、5センチメートルの物を与えると、5キロメートルの物を手に入れようとする人間なのである。ボクは彼女がそういう人間であることは十分知っていた。だから、ボクは、その後どういうことになるかちゃんと分かっているべきだったのだと思う。

それから間もなくして、ボクは男の服装をしている時よりも女性の服装をしている時の方が長くなっていた。ティナはボクにダイエットするように仕向けた。お化粧もするように仕向けた。ボクのウィッグや女性物の衣装のコレクションが急速に増えていった。そしてすぐに、ボクが男性の服装をする時間は、仕事に行く時だけになっていったのだった(下着については常時、女性物になっていた)。スーツはどんどん着心地が悪くなっていき、それとは正反対にレースのランジェリーがお好みになっていった。

自分で認めてしまうが、このような側面でちょっとした秘密を持っていることに、ボクはワクワクしていた。確かに、いろいろなことについて、かつての状態に戻したいと思う時はあった。でも、そのように思うのは滅多になくて、しかも、そういう思いはすぐに消え去るのがふつうだった。ティナは自分が望むようにボクを仕向けていたし、ボクもそうされるのが好きだった。ハロウィンが来るまでは……

「それに、その格好、お似合いの衣装でもあるわ。あなたがあのおぞましい雑誌を見てたのを見つけた後だから、なおさら」と彼女は2週間ほど前の出来事のことをほのめかした。あの時、ボクは古い『プレイボーイ』誌を見ながら自慰をしていたところを彼女に見つかってしまったのである。「それに、ハロウィンなのよ。バニーガール姿の男を見ても、誰も気にも留めないわよ。よくあるジョークだと思うはずだもの」

鏡で自分の姿を見た後では、彼女の言葉は正しくはないと思った。この姿のボクを見て、ボクがこの姿になったのは初めてだなんて、誰も思わないだろう。これが転換点になると思った。このハロウィン・パーティの後は、職場の誰もにボクの小さな秘密が知れ渡ってしまうだろう、と。でも、ティナに反論することは不可能だった。彼女と言い争っても、ボクは決して勝てず、最終的には、彼女が望んでいることを達成してしまうのだ。多分に、それはボク自身も望んでいることなのかもしれないけれど。


[2018/01/13] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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