
56_Just once 「いちどだけ」
「ダイアン、マジで居心地悪いんだよ。それ、分かってほしいんだけど、いい? いや、マジで……」
「分かったわ。でも、真面目でよ、ジャック。大したことじゃないわ。単に服装の問題じゃないの?」
「それに化粧も。美容院通いも。脚の脱毛も」
「オーケー、それくらいにして。でも、それであなたが変わるわけじゃないでしょ? あなたは前と同じ男。ただドレスを着ているだけ。なによ、全然、大したことないじゃない」
「ああ、大したことないよ。確かにね。だけど、ボクは……」
「ちょっといい? 本当にやりたくないなら、別に無理強いしないから。でも分かってほしいのは、これってあたしにとって一番萌えるシチュエーションなの。いい? あなたがやりたいことに、あたし、付き合ってあげてるでしょ? 今度はあたしの番よ」
「ボクの方はそんなに大したことじゃないのに」
「ええ、まあ、あんたは縛られる方じゃないからそう言えるかもね。あたしにとっては大したことなのよ。だから、これ。あたしたち、ここまで来てるのよ。あなたはすでにすっかり女の子の外見になっている。だったら、一晩くらいあたしの彼女になってくれててもいいんじゃない? 約束するわ、あなたもきっと楽しめるから」
「わ、分かったよ。でも、これで終わりだよ。いいね? これが終わったら、もうこんなレズ遊びは終わりだよ? ボクたちは普通の彼氏・彼女の関係に戻るんだからね?」
「ええ、もちろん。あなたがもう一度やりたいって言わなければの話しだけどね……」