
56_Old friends 「旧友たち」
「どうして、そんなにナーバスになっているのか分からないわ。あなたの親友の独身男の会でしょ? 当然、出席すべきよ」
「親友? 彼とは卒業した夏以来、会っていないんだよ。正直、彼に招待されてビックリしたくらいなんだよ」
「その人、ちゃんと理解していたと思うわ。あなたは、フランスで勉強する素晴らしいチャンスを手にした。その学校、毎年2人くらいしか留学生を取らないんでしょ? しかも、高校を出たての学生を対象にして。聞いたことがないほどのチャンスだった。あなたがフランスに来たのは当然だったのよ」
「分かってる。でも、2年間も友達とは会っていないんだよ。その間、何から何まで変わったし、それに……」
「あなたは以前のあなたと全然、変わってないじゃない。ちょっとスタイリッシュになっただけ」
「ま、まあ…。でも、真面目に言って、何か他の服に変えるべきと思わない? 先月買ってくれた可愛いジーンズとか、パンツでもいいけど」
「あなた、素敵よ。お友達みんな、あなたのことをうらやましがると思うわ。賭けてもいいわよ」
「ど、どうなんだろう……君はボクの友達がどんな人たちだったか覚えているよね? それにボクがどんなだったかも。もし、以前のボクが今のボクを見たら……」
「可愛いスカートだねって言うんじゃない? あたしにはあなたが分かるの。あなたは、こういう服を着るように生まれてきたようなもの。あなたもそう思っているでしょ? それに、お友達があまりに……あまりにアメリカ人すぎて、あなたの服装のセンスが分からないとしたら、まあ、その場合は、そのお友達の方の問題と言えるわね」
「でも髪の毛は? お化粧は? マニキュアはどう? 何と言うか、こういう格好をするのは、パリでは全然問題なかったけれど、ここでは、ダメだと思うんだよ。分かってると思うけど……みんなボクのことを女の格好をしてると思ってしまうよ」
「そんなのバカげてるってだけの話しよ」
「分かってるけど……」
「あなたは、他のどんな男たちよりずっと男らしいわ。それとも、あなたは、あたしが何か別の理由であなたと付き合っているとでも思ってるの? もちろん、そんなことないわ。あなたはとても素敵。もし、お友達がそのことを受け入れることがでいなかった、その場合は、そのお友達の方があなたと付き合う価値がない人ということよ」