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Resistance 「抵抗」 

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56_Resistance 「抵抗」
彼女の目に現れているのが見える。ボクに諦めてほしがっている。ボクも彼女を責めるつもりはない。ふたりとも、残酷な苦痛にどっぷり嵌っていたし、ボクもギリギリの状態になっていた。この苦痛から逃れることさえできるなら、屈服してしまいたいと思っていた。そして、そんなことを願う自分が嫌いだった。

ボクはすでに自分の人生を奪われていた。彼らはボクのまさに男らしさを奪い去っていた。差し出せるものとして他に何が残っているだろう。何もない。そうだろ?

彼女は口に入れられていた噛ませものを吐き出した。「あいつらに話すのよ。あいつらの言うことをするのよ」

ボクは拒否の唸り声をあげて返事した。でも、決意が弱ってきているのも感じていた。彼らが欲する情報を与えなければ、この拷問は終わらないことは知っていた。本当に情報をバラすことは、そんなに悪いことだろうか? 誰がボクを責められるというんだ? そう思った。

ボクと姉は、父の間違った行いのせいで誘拐されたのだった。狂信的な扇動者、レイシスト、国粋主義の男性上位主義者。それがボクたちの父だった。そして父は大統領の地位にあと一歩のところまで来ているのだった。誘拐者たちは、ボクたちに、公の場で、父の数多くの欠点を詳細に述べることだけを求めていた。

もちろん、今の姿になったボクが表に出るだけで、父にとって恥となるし、何度も同性愛者を嫌悪する発言を繰り返してきた父の虚言を露わにすることになるだろう。これはすべて、大衆の認識をそらし、父の影響力から国を守ろうとするために彼らが計算したことだった。

でもボクはこの計画でのカナメとなっていた。彼らは、ボクの口から、彼らの行動は正当だと言わせたがっていた。そして、そのための時間が切れかかっている。ボクはいつまで抵抗を続ける力を維持できるか、分からなくなっていた。


[2018/01/21] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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