少なくとも、誰かが私の愛する人とコンタクトを取っていることが分かった。私は、この美しい黒人女性のことを、最初に会ったときから、本能的に尊敬していたと思う。彼女は、メス狼が子を守るように、ダニーのことを守ってくれている。愛する人に会うことも話すこともできないのはとても辛かったが、少なくとも、ダニーが良き人に守られていることは理解した。私の心を適切に表す言葉をつむぎだそうと頭を巡らせた。一瞬、その点に関して才能のあったダニーのことを思い出し、あのような才能が私にもあったらいいのにと思った。ゆっくりと言葉を選んで話した。
「今この場では信じてもらえないのは分かっているけど、私は彼女のことを心の底から愛しているの。もし、私の心を証明する唯一の方法が、ダニーが私に接触する心積もりができるまで、ダニーから遠ざかっていることだと言うなら、その通りにするわ。あなたなら彼女のことを大切にしてくれると信じているし、あなたが、ダニーにとって最も利益があることを考えていてくれてるのも分かってる。私もそれを考えているの。うまく目に見える形で表すのが苦手だけど。ダニーに良くしてあげてね、お願い。私もそうしていたつもりだったけど、もっと良くしてあげて。ダニーは、そうされて当然の人だから」
セリーヌは何か言いかけて口を開いた。だが、言うのをやめたようだった。
「帰ったほうがいいわね」 彼女は無感情にそう言い、そっぽを向いた。
私は、言い返すことはせず、言われた通りに店を出た。
考えられるうちで最も小さな突破口だった。だが突破口であるには変わりない。少なくともダニーが生きていることが分かった。どこで生活しているかは分からない。だが、セリーヌなら知っているのは確かだ。多分、ダニーは彼女と一緒に生活している。そう考えると、つじつまが合った。ダニーが一緒にいても安全だと感じられる人は、セリーヌの他に誰もいなかったのだろう。先に、私は、セリーヌに初めて会った時から、彼女のことを本能的に尊敬していたと言った。もしセリーヌがダニーを保護しているなら、ダニーが他の女性と一緒にいることに、卑しい嫉妬を感じてはいても、その気持ちは脇において、今こそ、本当に尊敬しなければならないだろう。
私は、すべきことと決めたことを行った。仕事をし、日常的なルーティンに没頭した。不動産の販売を営業し、友人とランチを食べたり、仕事帰りの飲みに行き、そして家に帰る。ある日、友人たちは私を説得し、一緒にクラブに行くことになった。もちろん、私に言い寄ってくる男性が現れる。これも友人たちの意図したとおり。私は元気付けられた。少なくとも、仕事に関係しない会話をすることは楽しかった。それにダンスも何度かした。誰かに抱きつき、その体の温かみを感じることは気持ちよかった。ただ、それは前とは違った。男性たちとの会話・・・スポーツや仕事、新しい車やボート、それにどういう風に私のような女の子を探してきたか・・・といった話は、あまりに陳腐にしか聞こえなくなっていた。
正直に言うと、一度、そういう男性たちの1人を家に連れてきたことがある。彼は名前はスタンとか何とか・・・。ともかく、彼は男だ。そういう言い方しか思いつかない。確かに魅力的だし、体格も素敵だった。彼の「外見」はオーケーだった・・・ただ、オーケーだったというだけ。彼はありきたりにセックスをし、彼はいって、私はいかなかった。いったふりすらしなかった。それが終わった後、元気さを取り戻した私は、彼に失礼にならない程度に、早々に彼に出て行ってもらった。彼が私の中に入っている間、ずっと私は彼とダニーとを比較していた。そして、比較にならなかったのである。あのスタンとかいう男の完敗だった。
2ヶ月ほどして、地元のニュースで奇妙なニュースが流れた。