56_The ladder 「出世の階段」
「脚を上げて」とターニャが言った。エリックは言い返すこともなく、指示に従った。彼は、この職が不安定であることを知っていたし、ここまで這い上がってきた道から外れるつもりもなかった。ここまで来るのにあれだけ耐え忍んできた後だけに、なおさらだった。
エリックのアナルに、今やすっかり馴染みとなっているターニャのストラップオンがえぐりこんできた。それを受けて彼は悩まし気なヨガリ声をあげた。ターニャには、彼がこれを望んでいると思ってもらわなければならない。こういうことをすることがターニャの性的妄想のひとつなのだ。そして、そうであるがゆえに、彼は、こういう反応をしなければならないのだった。
一度ならず、エリックは、自分が本当に正しい選択をしたのだろうかと疑問に思っている。正しい道を選んできたのだろうかと。仕事の面について言えば、ターニャにこうして体を使わせていることは、疑いようがなく成功している。彼は、社内での出世の階段を、彼の動機の誰よりも早く駆け上ってきた。女体化の段階を進むたびに、昇進をしてもらった。しかし、個人的な面について言うと、自尊心が急速に朽ちていく意識に打ちひしがれていた。
彼の仕事の上での能力は関係ない。彼は数多くミスをしてきたが、すべて無視された。彼は、ターニャの求めを拒まない限り、非難から守られてきた。毎日、職場ではその立場が補強されていくばかりだったし、毎晩、家では自尊心と安定した職と自尊心の葛藤に悩まされるのだった。
もちろん、職場の誰もが、エリックはターニャが飼ってるシシーだと知っている。実際に行為をしているところを目撃した者はまだ誰もいないが、にもかかわらず、誰もが事実を知っていた。エリックも、同僚たちの意味深な目つき、薄ら笑う顔つき、それとなく聞こえるヒソヒソ声を無視できなかった。彼は、あらゆる意味で、体を売っているのである。確かに高額を受け、有力者に囲われてはいるが、娼婦であることには変わりがない。
エリックは、この状態をいつまで続けられるだろうかと思わずにはいられない。