56_A new guy 「新人」
「じゃあ、あんたが新人さん? ふーん」 とボビーが言った。彼は黒いウサギ耳をつけている。他に身に着けているものはほとんどないも同然。ボビーの隣にはサムがいた。彼は細いストリング・ビキニを着ている。やはり彼も、曲線豊かな体をほとんど隠していないも同然だった。
「え、ええ…そうだと思う」とティムは答えた。握手をしようと手を出しながら言った。「ボクはティム。でも、ダイアンさんから、ここで働いてる間はダイアモンドという名前を使うべきと言われてる」
「ダイアモンド? マジで? 彼女、いつも最悪の名前を選ぶわよね」とサムが言った。「あたしはマーキュリーって名前を付けられたわ。ボビーはスパークルって名前。でも、舞台では本当の名前を使えそうな感じじゃないもんね」と彼は肩をすくめた。
「で、あんた、どうしてバンズに来ることになったの?」とボビーが訊いた。「あんたの奥さんが、可愛い秘書と逃げたとか?」
「ボ、ボクは……なんて言うか、ボクの仕事の領域では誰もボクを雇ってくれないだろうって思って、ここに来たんだ。男女差別の訴訟を起こそうとしたんだけど、どの弁護士に相談しても大笑いしてボクを彼女たちのオフィスから追い出して。男がコンピュータ・プログラマになろうなんて冗談にもほどがあるって、彼女たちみんなそう言うんだ」
「確かに、そんなプログラマ、聞いたことないわね」とボビーが言った。「それに、いい? ここではあんたはただのストリッパーなの。お客の女たちには、大学に進むために働いてるとかって言うのよ。そっちの方がよっぽど信憑性があるから」
「それに、もし女の人があなたと裏部屋に行こうとしたがったら……その意味分かるわよね?……ともかく、その場合はダイアンさんに教えること」とサムが付け加えた。「彼女、裏部屋でちゃんとあんたが安全でいられるようにしてくれるから。それにちゃんとお客の女がカネを払うよう仕切ってくれるわ」
「それって、まるで、こんなガリガリの痩せシシーとやりたいって思う人が出てくるみたいな言い方じゃない?」 とボビーが皮肉を言った。「ひとつだけアドバイス! あまり居心地よくならないこと。ここには男たちがいっぱい来ては、すぐ出て行くんだから」
ティムにはそれ以上、説得の必要がなかった。彼はずっと前から、これは一時的な解決案にすると決めていた。自立できるまでの仮の仕事と。一生、ストリッパーを続けていくつもりはないと……