56_Under my control 「あたしの支配下」
あたしは、人を操る悪い女。自分がどんな人間かについて、否定しても意味がないので、否定はしない。人を支配して、その人が普通なら避けるような状況に追い込んで、その人の周りの世界をすっかり変えてしまうと、ものすごく興奮してしまう。そんなことをすると、ちょっと狂ったこともすることになるのは分かってるけど、自分は自分だから、これでいいと思っている。
と、そこまでは言ったうえで言うけど、あたしがレイチェルとチャドが競い合うよう、ふたりを変えたことが、あたしのこれまでの短い人生でも一番大きな達成だと言っても、信じてくれるんじゃないかしら? ふたりと出会ったとき、ふたりはごく普通のカップルだった。若くて、バカで、頭の先からつま先まで愛し合ってるカップル。……ええ、ふたりのそばにいるだけでも、ムカついたわ。だから、ふたりの関係を変えてやろうと決めたの。
作り話をしようとは思わない。ふたりを変えるのは難しかったわ。ふたりの人生にこっそり忍び込んで、ふたりを競わせる。そうするために知ってる限りのあらゆる技を使わなくちゃいけなかった。まずは、ふたりにあたしを好きになってもらわなくちゃいけなかった。ふたりに、あたしを喜ばしたいと思ってもらうことも必要だった。ふたりの間の関係のすべてにおいて、あたしが中心になる必要があった。そして、半年間、頑張った結果、望み通り、あたしがふたりの間の中心になれた。それからだったわね、面白くなっていったのは。
人を操る場合、どんな場合でも、嫉妬心は強力な道具になる。一方の人にだけ好意を示すと、どんなにわずかな好意でも、もう一方の人に妬ましさの気持ちを与えることができる。すぐに、ふたりとも、あたしの小指で操れるようになっていた。ふたりとも、あたしが望むこと何でもするようになっていた。
女性をレズビアンに変えるのは楽しい。レイチェルのようなお堅い女をいちから変えるのは面白い。でも、男をレズビアンに変えることは、もっと楽しい。ましてや、その両方をするとなると……もう、どれだけ楽しいか、言い表す言葉が見つからないほど。
チャドは、あたしがレイチェルの方が気に入ってると知ると、すぐに彼はレイチェルのような姿になろうと努力し始めた。あたしが、必要な時、彼にこの道を進むように背中を押したのは確かだけど、女性化の大半は彼自身が自分で考えてやったこと。
そして、今はどうなったかって? まあ、ご覧のとおり。エロ女ふたりを完全にあたしの支配下に置いている。ふたりにさせたいと思ったこと、何でも、やらせることができる。まあ、しばらくはこれで楽しめると思うけど、あたしはサイクルがあるのを知っている。つまり、じきに、あたしはふたりに飽きちゃうだろうということ。その時はふたりを解放しなくちゃいけなくなるわね。でも、その時は、次の計画に取り掛かるつもり。
次は、ひとつの家族全員を変えちゃうつもり。それって面白そうじゃない?