65_A questionable plan 「疑わしい計画」
「ねえ、こんなのうまくいくはずないよ。ボクたちが女だって、誰も信じないよ」
「お前って前からそういう病的ペシミストだったよな。つか、自分の姿を鏡で見たことあるのか? 俺はお前が男なのは分かってるが、そんな俺ですら自分の目を疑ってるんだぜ?俺を信じろよ。うまくいくって」
「分かったよ。確かにそうだね。ボクたちは女に見えている。体毛を剃ったりお化粧をしたりとかで……」
「ニセ胸も忘れるなよ」
「ああ。これだね。これのおかげで、ちゃんと目的通りになってるよね。役割通りの姿になってる。そして、このおかげであいつらをだませるって言えるよね。でも、その後、どうする? これでボクたちにどううまくいくのか、ボクはまだ確信できないんだけど」
「マジで言ってるのか? まず、俺たちはイジメにあわずに本物のパーティに行けるようになる。その点だけでも充分だよ。だけど、それに加えて、あのイジメ野郎たちの誰かが、女装した俺たちに惚れた場合を想像してみろよ。いや、悪くても、あいつらの誰かが俺たちとヤリたいと思ったらどうなるかでもいいや。そうなったら、ゲイだって思われることになるわけで、あいつらにとってはゲイだと思われることくらい最悪なことがないわけだろ?」
「ああ、あいつら、ホモ嫌いだからね。でも、その場合、他の男に罠をかけて、自分たちは女だと思わせた方の男たち、つまり、ボクたちはどうなるの? よくニュースになっているよね?」
「それについては心配するな。そこまではいかないから。というのも、俺は写真を撮るつもりだからさ。証拠写真があれば、あいつらからイジメられることはなくなるよ。分かるだろ、写真で脅かせばいいんだ」
「マーク、やっぱりこの計画、良くないよ」
「俺をアビーと呼べよ。キャラになり切らなくちゃだめだ」
「ああ。でも、この計画、良くないよ、アビー」
「頼むよ。ポジティブに考えるんだ。きっとうまくいく。見てれば分かるって」