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Bitter defeat 「苦渋の敗北」 

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65_Bitter defeat 「敗北の苦渋」

パニックになり体をよじった。拘束具から逃れようと身をよじるが、悪あがきだった。拘束具は単純ゆえに確固としていて、いかに試みようとも、逃げることは不可能だった。だが、気落ちしてる理由はそこではない。こういう拘禁からは逃げたことがあるし、その数は数えきれない。これまでは、毎回、逃げ延びてきた。だが、今回は以前とは違った。

「どうやら分かってきたようだな。違うか?」 と今や聞き慣れた声がした。最強の敵、ブルーム博士だ。これまで仕事を続けてきたが、ブルームのことはいつも引っかかっていた。彼の非道な計画はことごとく潰してきたものの、彼はこれまで逮捕をまぬかれてきている。

顔を上げ、ブルームの傷がついた顔を見上げた。返事はしたが、言葉はくぐもった音にしかならなかった。

ブルーム博士は高笑いした。そのガラガラ声はいつもの通り、私の背筋に冷たいものを走らせた。

「何度も何度もお前を殺そうとしてきたんだよ、スティール君。試みては失敗してきた」彼はそう言って私に近づいてきた。指で素肌の胸から腹のあたりを撫でられ、その冷たい愛撫に私は身をよじらせた。いきなり彼は私の胸を乱暴に握った。痛みが走る。私は思わず泣きそうな声を上げた。だが、その声すら猿ぐつわのためくぐもった声にしかならなかった。冷たい視線で彼を睨み付けた。だが、涙が溢れだし、頬を伝い流れたために、睨み付けた効果はほとんど意味を持たなかった。

彼は顔を近づけ、舌を出し、私の頬から涙を舐めとった。啜るように短く息を吸った後、彼は悪魔のような笑みを浮かべ、頭を後ろに傾け、頭上を見上げた。「ずっと前からお前の涙を味わうことを夢に見てきたのだよ。実に、実に長かった」

私は再び拘束から逃れようと身をよじった。それには意味がないこと、どう足掻いても逃れられないことは知っていたが、無意識的な反射の反応であり仕方なかった。そして、その私の反応が、彼からさらに狂気じみた笑みを引き出す。

「お前は、まだ、この中にいるのだな」と彼は私の耳元に囁きかけた。「私には分かるぞ。だが、そこには長くはいられまい。お前の肉体は変えられた。すぐに心も後を追って変わることになるのだよ。もう2週間もすれば、お前は喜んで私のベッドに這い上がってくるようになる。お前は喜んで秘密を全部私に話すようになる。そして、お前の仲間たちが私の手で全員死ぬことになる。それを思って、どんな感じかな?」

私は、思い切り頭を横に振り、彼の鼻に打撃を加えた。驚き引き下がった彼の顔から、思い通りに血が噴き出す。いつもいる警護員のひとりが飛び出してきたが、ブルームは彼を抑えた。

「こんな小さな傷を負わせたからと言って何になると思ってる?」 彼は血を滴らせながら、かすれ声で言った。「私はお前のアイデンティティを完全に奪う! お前を四つん這いにして、犬として振る舞うようにさせる! 私の奴隷にする! そして、誰もが、抵抗の代償を目にすることになるだろう。私が敵に対して何をするか、誰もが見ることになる!」

口答えをすることができなかった。もっとも、口答えをするにしても、何も言うことがなかった。この男に支配されているのだ。彼が勝利を収めたのだ。彼はいま言ったことを確実に実行するだろうし、それ以上のことをもっとするのだろう。


[2018/02/07] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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