
65_Double life 「二重生活」
「うーむ、私の可愛い淫乱ちゃんがソノ気になってるようだね」
「その言い方やめて」とカレンがベッドから見上げた。「そういう言い方されるの嫌なの、知ってるでしょう?」
「ケビン、これはただ……」とダレンが言いかけた。
「それに、一緒にいるときは、ケビンと呼ばないで。カレンなの。ケビン関係はオフィスだけにして。そう呼ばれると気分がそがれるわ」
ダレンはため息をついて、顔をそむけた。しばらく沈黙が続いた後、彼は言った。「もう、これは続けられないと思ってる」
「え?」 とカレンは起き上がった。「どういう意味?」
ダレンはベッドの端に腰を下ろした。「言った通りだよ。できない。こういうのは、もう。二重生活。嘘の生活。私は……もうやめたいんだ。いいかい? すまないが、でも……」
「あたしを捨てるの? これまでいろんなことを一緒にしてきたのに? 何度も一緒に旅行してきたのに? なのに、なのにあたしを捨てるの? ……まるで……まるで、ごみを捨てるみたいに。あのアバズレのブレンダでしょ? そうじゃない? あなたは彼女が好きよね? だって彼女……」
「ブレンダはアバズレじゃない。私の妻だ」
「でも、あなたは彼女を愛していないんでしょ?」 とカレンはダレンの横に移動した。両手を彼の肩にかけ、もたれかかった。「もう、あたしのこと愛していないの? そんな言い方に聞こえたけど」
ダレンは彼を振り払った。「妻には別れてくれと言ったんだ。私は君と一緒になりたかった。本当に、そうだったんだ。そして今も。だけど君は、本気になれないでいる。私に対してもそうだし、本気でカレンになれないでいるのは確かだ」
「複雑なのは分かってるでしょう? サマンサもいるし子供たちもいるから、どうしても……できないの……彼女や子供たちに対して、そんなことできないの……」
ダレンは頭を振った。「だから別れなくちゃいけないんだよ」そう言って、彼は立ち上がった。少しだけ振り返り、その後、ドアの方へと進んだ。別れ際、彼は言った。「じゃあ、職場で、また。ケビン」