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Drive 「駆り立てるもの」 

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65_Drive 「駆り立てるもの」

誰もが、あたしは自分がしてることを、自分という人間を恥じるべきだと思っている。あたしは恥じたりはしない。誰もが、あたしは新しい道を探し、他のことをして人生を歩むほうが良いと思っている。あたしはそうはしたくない。誰もが、あたしは自分のした決断を悔やみ、自己嫌悪する方が良いと思っている。あたしはそんなことはしない。あたしは、まさに願った立ち位置にいる。それが現実。あたしは、まさに、なりたいと思った人間になっている。そして、あたしの人生には後悔という言葉は存在しない。

最初は、そういうふうに始まったわけではないことは認める。今の状態に向かう歩みは、一歩進むたびにためらったし、ちょっと前進するにも、心の中、し烈な戦いを繰り返した。でも、どの岐路においても、あたしは、前進するという同じ決断をしてきた。というのも、この道の最終地点はとても魅力的だったから。「絶対的な安全」というのを考えてみてほしい。今の時代、絶対的な安全なんて、ほぼ完全にありえなくなっている。でも、今のあたしは、その絶対的な安全を手にしている。だから、決して後戻りはしないつもり。これを手に入れるために「男らしさ」を犠牲にしたけれど、それは関係ない。よい取引だったと思ってるし、さっきも言ったように、あたしは後悔していない。

始まりは同僚との何気ない会話からだったと思う。当時、あたしは初歩レベルのデータ・アナリストで、とても素早く出世するなど考えられなかった。そんな時、同僚が、顎を動かして、ある若く可愛いアシスタントにあたしの注意を向けさせた。「あの娘、俺たちより稼いでるって信じられるか? つまり、彼女、時々、ジェイムズソンのオフィスでひざまずいて……」

それには目を見開かされた。あたしの人生を変えた真理だった。あの瞬間、あたしは、自分が会社のためにできることは大部分、意味がないことだと悟った。何時間か残業したとして、あるいは、毎月、何個かノルマ以外のプロジェクトと完成させたとして、何の関係もない。誰も気づいてくれない。だけど、あのアシスタントの女の子は違う。それなりの人の注意を惹き、それをテコにして有利に進めている。そっちの方がはるかに良い道としか思えなかった。

直ちにネットに接続して女性ホルモンを購入したなどと言うつもりはない。あたしは、そんなに簡単に自分の男性性をあきらめたりはしなかった。男性性を手放す境地に至るまで、ほぼ1年、今となっては無意味と思う苦悶を続けた。苦悶しつつも無視することもできなかった。すべて、理屈が通ると思ったし、考えれば考えるほど、利点が増えていった。もし、自分がなりたいと思う人間になれたら、自分を取り囲む世界が収まる場所に収まるだろうと。確かに、あまり気乗りがしないこともしなくてはいけないだろうけど、人生とはそういうものだ。あたしは思い切ってやってみることにした。

1年後、あたしは完全に変身を遂げていた。あたしが有していた物事のうち、自分のそれまでの人生を捨てるのを止めるものが何かあっただろうか? 仕事? 友達? 家族? 大きな計画の元では、それらは該当しなかった。今でも、欲しいものを手に入れている限り、それらは関係していない。

あの運命の会話があってから、今はほぼ3年になる。あたしは、大半の勤務時間を床にひざまずいて過ごす可愛い女の子になっている。いや、間違い。床にひざまずくのも多いけど、仰向けになっていることも多いし、デスクに覆いかぶさっていることも多い。この会社に採用された時に期待された職務をいつやったか、すでに思い出せない。でも、あたしは気にしない。採用時の会社によるあたしの評価点数を知ってるし、今の評価点数も知ってるから。あたしは誰とでもヤル淫乱? 売春婦? 社内慰安婦? どう呼んでくれても構わない。


[2018/02/08] 本家掲載済み作品 | トラックバック(-) | CM(0)

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