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65_Liberation 「解放」
私はたくさん間違ったことをした。それは否定できない。在職は非常に短く終わってしまったが、その間、信じられないほどの数の間違いをした。ほとんどすべての状況で間違った取り扱いをした。そして、最終的には、その代償を自分で払うことになった。
当時の私は、自分は正しいことをしているのだ、自分はある種、他人とは違うことをしているのだと自信に溢れていた。多分、いまだにそう思っている自分がいる。でも、私がどう考えようが、それは関係ない。今はもはや、私はそんな人間ではなくなっているから。すべて、悪い思い出にすぎなくなっているから。
誰でも、警官になりたての頃は、周りから、お前は他人とは違う大仕事を成し遂げるだろうと言われるものだ。そして、それが本当になるときも、確かにある。でも、仕事の大半の場合、私たちは単に状況に機械的に反応しているにすぎない。すでに被害は生じてしまった後で、私たちは現場に行き、その事件の結果を提供するだけである。だから、犯罪を予防するチャンス、良い結果を得るために何か悪事を阻止するチャンスが得られると、私たちは、どうしてもそのチャンスに飛びついてしまう。
年配の警官が潜行捜査に入ることは決してない。彼らには分別がある。家族もあるし、生活もある。でも、若い景観の場合はどう? 新米警官の場合は? そんな私たちは、年配の警官に比べて分別に欠けているものなのだ。そうでしょう? 私たちはみんな、誰か救い出すべき人を探す、白馬に乗った正義の騎士の気持ちだったのだ。
少なくとも私はそうだった。理性的には、リスクがあることは知っていた。でも、私は、自分の能力をあまりに過信していたので、そんなリスクは現実にならないと高をくくっていた。そして、私は、あまりに、思い違いをしていたのだった。
彼らが私の正体を見破ったのは、私が彼らの組織に潜入してすぐだったと言える。そもそも、潜入があまりに簡単だった時に、何かおかしいと気づくべきだった。でも、私はうぶだったし、愚かでもあった。結局、私は彼らが望む場所へと誘導されてしまったのだった。
それが実際にどう進められたか、ほとんど覚えていない。与えらえた薬物のため、記憶の大半が奪われてしまった。大きな流れは分かっているけど、自分の名前といった細かなことは記憶から消えてしまった。今、自分が持っている唯一のアイデンティティといったら、彼らに与えられたアイデンティティだけ。
私は彼らに抵抗したのだと言えたらいいのにと思う。でも、事実は単純で、実際に抵抗したかどうかすら分からないということ。女性化のプロセス全体がモヤモヤして記憶がはっきりしない。手術やホルモンや「レッスン」については知っているけど、記憶にはモヤがかかっている。いつか、私はすべて忘れてしまうことになるのだろう。今でも、記憶が水平線の下へと落ちかかっている気がする。間もなく、全部、消えてしまうのだろう。
でも、それはそれでよいのだろうと思う。少なくとも、そうなってほしいと思っている。自分が間違いを犯したことを知らずに、自分が失ったものを忘れて生きる。それはとても解放された気持ちになれるように思える。恐ろしいけど、解放的だろうと。