
65_Pet 「ペット」
「その様子からすると、新しい家に行く準備ができてるようね」とプリシラはサディスティックに笑った。「興奮してる?」
ケビンは、両手が自由になっていることはありがたかったが、あえてボール・ギャグ(
参考)を自分から外そうとはしなかった。以前に、勝手に外すという間違いをしてしまい、ひどい目に会ったので、その経験を繰り返す気はなかった。その代わり、彼は、言葉にならない、くぐもったうめき声をあげるだけだった。できれば、義母の心の琴線に触れ、同情を得られるかもしれないと期待していた。
「あら? もう猿ぐつわを外してもいいのよ。調教師たちは帰っていったもの。あの人たちの仕事は完了したからね。あたしは、お前が新しい所有者にもらわれていく前に、最後のおしゃべりをしたいと思ってここに来たんだから」
ケビンはためらった。これは罠かも? 勝手に外したら、それを口実にして、またお仕置きされるかも?
「猿ぐつわを外しなって言ってるの!」 突然、それまでのお遊びの感じから厳しい口調に変わった。ケビンはその変化に気づき、即座に命令に従った。
彼は顎の調子を直した後、勇気を振り絞って、質問した。「ど、どうしてボクにこんなことを?」しばらくしゃべっていなかったので、声がかすれていた。
「込み入った話だわ」と彼女は彼の檻を指でなぞりながら言った。「でも、カナメだけ言えば、やれたからやった、ということ。あんたの父親はあたしを道具のように扱った。それも同じ理由だったわ。あたしは彼の所有物にすぎなかった」
「ぱ、パパはあなたを愛していたよ……」
「あの人は、あたしを所有していることを愛していたの。他の男たちがあたしを見る様子を見るのが好きだったの。周りの人が羨むところが好きだったの。あたしはモノだったわ。ただのモノ。ただのトロフィー。そして、あの人は死んだあと、あたしに1銭も残さなかった。あたしは遺産を残す価値がなかったんでしょ、あの人にとっては。でも、お前は? お前はその価値があったということよね?」
「ぼ、ボクはそんな価値はなかった……言ってくれれば……欲しいものは何でも譲ったのに。言ってくれれば……」
「分かってるわよ」とプリシラは言った。「全部、欲しいわね。お前は、来週、死亡したことになる。そして、あたしが全部いただくわ。カネも家も車も。最初からあたしのものだったもの、すべて」
「で、でも、ボクは……」
「でもね、それが欲しくて、これをやったわけじゃない」とプリシラは檻に閉じ込められた女性化した若者に手を振って見せた。「こういうことをやりたかったからやったのよ。お前が壊れていくのを見たかったから。可愛い男の子がみるみる怯えてぷるぷる震えるペットに崩壊していくところを見るのって、おカネじゃ買えない価値があったわ。ケビン、あたしはあんたが大嫌いなの。前からずっと大嫌いだった。あんたの父親が19歳になったら、こんなヤツだったんだろうってあたしに思わせるから。この世の中、あんたたちみたいなのは必要としてないのよ。あんたは、そして世の中も、あんたがペットとして生きる方がいいのよ」
ケビンは言い返そうとした。だが、バンが家の前に来るのを見て、口ごもった。「ボールギャグをつけなさい。お前が死ぬまで続けることになる人生。その初日が今日。だから、飼い主に良い印象を与えた方が良いんじゃない?」