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66_Closing the sale 「売買契約の締結」
あたしは、不安と恐れを感じつつ、ふたりの男の前に立っていた。ひとりは高価そうな縦縞スーツを着た男。この男をあたしは知っている。もうひとりは知らない男。知ってる男と知らない男でどっちがよりひどいかは分からない。でも、どっちにせよ、これから何が起きるかは知っている。
「いいぞ、その調子だ、ナタリー」と、服を脱ぐあたしを見て、知ってる男が言った。脱いだドレスが床に落ちる。「恥ずかしがることはねえぞ。お前は服を着てたら、事実上、仕事にならない人間なんだからな」
「ずいぶん、躾けができてるようだな」と知らない男が言った。
「みっちり仕込んだからな。俺自身が躾けたんだ」とあたしを調教した男が言った。
「それは安心した」 おそらくあたしの新しい所有者になる男が言った。「この女の経歴は?」
「他のと同じだよ。のめり込みすぎた若者さ。最初は一時的なことだろうと思ったのだろう。マゾっぽい嗜好を満たすためだけだと。すぐに元の普通の生活に戻れると思っていたのだろう。だが、俺は、こういう極上の獲物が来たら、絶対、手放さないのさ」
「その理由、分かるぜ」ともうひとりは言い、あたしの乳房を握り、乱暴に揉んだ。「チューン・アップもよくできてるな」
「というわけで、あの価格だ」
「普段は、俺はケチな男なんだが、これは……これは、あんたの言い値を払うだけの価値は充分にある。代金は今夜にもあんたの口座に振り込んでおくよ」
あたしの持ち主は笑顔になり、買い手に握手を求めた。買い手の男も手を出し、ふたりは握手した。「取引完了だな」そう言い、男はあたしの方を向き、言った。「おめでとう。お前はこれでこの会社のあたらしい玩具だ。俺に奉仕するときと同じように、喜んで仕事に励むんだぞ。分かったか?」
「はい、ご主人様」
「よろしい。俺は返品されるのが大嫌いなんだ」