
66_Defiant 「反抗的」
「彼、ちょっと憮然としてるようだけど。抵抗してるの?」
「いえ、いえ、そんなことは。彼はただ状況に適合するのに苦労してるだけですよ」
「どんな苦労? 反逆したとか? 当局に連絡する必要があるかしら?」
「いえ。全然、そんなことではありません。少し気落ちしてるだけでしょう。ご存知の通り、彼にとっては大きな変化ですから。あれだけ力があったのに、今は、この姿ですから。多少、気落ちしても驚くほどのことではありませんよ」
「でも、気になるわねえ。気落ちすると不服従の状態になりえるの。そして、不服従はずっともっと大きな問題につながる可能性があるの。ちゃんと彼をコントロールできてるの?」
「私ども、ちゃんと法律を順守しております。彼は完璧な男性のまさに見本となっております」
「態度に問題を抱えた完璧な男性。そういう存在は私たちは許さない……」
「是非とも思い出していただきたいのですが、あの法律が可決された時、ある一定の状況は特例とされるとなったはずでございます。パワーを持っていた男性を従順にするのには困難が伴うという理由から、私どもにはある程度の自由裁量が認められております。彼は、『メン・ファースト』運動のリーダーなのです。彼がそういう自由裁量の資格があるのは確実ではないかと」
「誰も彼が資格がないとは言っていません。ただ、懸念があると言ってるのです」
「どうか、ご心配なさらぬように。彼がどれだけ変わったかご覧ください。体はご覧の通り。もう何ヶ月も、服を着ずに過ごしています。完全に従順と言える態度です。それに比べたら、態度の点での小さな問題など、取るに足らないことですよ」
「取るに足らないことが、大きなインパクトを持つことがあるけど?」
「存じております。でも、その点でも彼は進化しておりますよ。じきに、彼は他の男たちと同様、充分に適応しハピーに生きるようになりますって。ちょっと時間がかかってるという、それだけですよ」
「あんた、本当でしょうねぇ。小さな反抗ですら私たちが打ち立てたバランスを覆す可能性があるのです。私たちが作り上げたすべてを崩壊させる可能性もあるんですから」
「私にご講義なさる必要はありません。そのために彼を調教するよう私が選ばれたのですから」
「分かっています。だが……」
「ご視察は以上でよろしいかと。それでは、今日はこれで」
「だが……」
「今日はこれで」