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66_The truth 「真実」
「ヤバいっ」 ジェシーは門が開くのを見て、髪の毛を指で掻きながら言った。どこにも逃げるところがない。隠れるところもない。「マジで、ヤバい!」
そして彼の父親が姿を現した。「ジェシー? 庭にいるのか? お前に買って来たよ。……え……何だ? これは……」
初老の男性の驚きは、理解できるものだった。庭に踏み入れた途端、18歳になる息子がビキニ姿でいるのを見るなど、心の準備ができてることではありえない。だが、彼の心の準備があろうがなかろうが、ふたりにとって、この状況は何とかして対処しなければならないことだった。
「お、お父さん。お父さんが思ってることじゃないんだよ」とジェシーは言い訳を探しつつ、何とか落ち着いたフリを続けようと必死だった。「ボクは……これは……ああ、どうして、今日はこんなに早く帰って来たの?」
「お前と一緒の時間が欲しくて、今日は早退してきたんだ」と彼の父は言った。声は普通だった。彼は、ほとんど瞬時に平常心を取り戻していた。「私に説明することがあるんじゃないかな、と思うんだが。お前はトランスジェンダーなのか? それとも、これはただの遊びなのか? 何が起きてるんだ?」
「くそっ!」とジェシーは言い、後ろを向いた。いつの日かバレるだろうとは思っていた。でも、いつかこうなるだろうと思うのと、実際にそうなったときにどう対処するかは、まったく異なることだった。「すごく複雑なことなんだ」
「何が起きてるのか、お父さんに話してくれるだけでいい」と彼の父はジェシーの肩に手をあてた。「理解したいと思っているんだ」
「ああ、どこから話したらいいんだろう?」 ジェシーは目に涙が溢れるのを感じた。「最初、ボクはこんなことをしたいとは思っていなかったんだよ。本当に。ボクが考えたことじゃなかったんだ。カルメンなんだ。彼女が、面白いんじゃないかと言って……つまり、ボクが時々彼女の服を着たら面白いんじゃないかと言って……。実際、楽しかった。それも本当だよ。でも、そんなところをトミーに見られて、すべてが変わってしまったんだ」
「トミーだって? 隣のトミーか?」
ジェシーは頷いた。「トミーはボクを脅かし始めた。言うことを聞かなかったら、みんなにバラすぞって脅かしたんだ。そしてトミーは……トミーはボクに……女の子がするようなことをさせたんだ。彼を相手に。ボクは言うことを聞かないわけにはいかなかったんだよ、お父さん。みんなに知られたくなかったんだ」
ジェシーの父親は、息子を慰めようと、彼の細い肩を両腕で抱いた。でも、その時、ふとあることに思い当たった。「でも、トミーがここを離れてから1年以上になるじゃないか。彼はずっとワシントンにいるはず」
「そ、そうなんだ。さっきも言ったけど、複雑なんだよ。ボクはトミーに使われているうちに、どこかで……正確にはいつだったか分からないけど、でも……ボクはそれが好きになってしまったんだよ。女の子のように扱われるのが好きになってしまって……」
それを認めた瞬間、ジェシーは肩に背負った重荷が急に軽くなるのを感じた。この真実をあまりに長い間隠し続けていた彼は、告白した瞬間、わっと泣き出したい気持ちになっていた。父親に抱かれながら、彼は思い切り泣き始めた。
「それは構わないんだよ。大丈夫」と彼の父はつぶやいた。「すべてうまくいくから。安心するんだ」