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66_Waking up to a new life 「目覚めたら」
マイクは、馴染みのないベッドから転げるようにして這い出た。まるで大型トラックにはねられたような感じだった。身体中が痛い。口の中が乾いている。頭がズキズキしていた。
「昨日の夜、何があったんだろう?」 そう呟き、立ち上がり、痛む筋肉を揉みながら背伸びをした。その時になって、自分が素裸でいることに気づいた。ピンク色の部屋を見回し、ため息をついた。「ちくしょう」
「ちくしょう」 ドアの方から声が聞こえた。マイクは目を上げ、親友のポールがいるのを見た。たどたどしい足取りで部屋に入ってくる。マイクと同じく、ポールも全裸だった。しかも、彼も体毛がなく、ブロンドの髪の長いかつらをかぶっていた。彼は1年近く、ひげを伸ばし続けていたのだが、それがすっかりなくなっている。
「お前、どうしたんだ?」 とマイクはかすれ声で訊いた。「お前のひげは……」
ポールは素早く顎に手を当てた。そこはすっかりつるつるになっていた。「ちくしょう」と彼は繰り返した。「何があったんだ?」
「覚えていないんだ」とマイクは答えた。「俺たち、トミーと一緒にあのクラブに行ったよな……その後……えーっと……」
「酔っぱらって、トミーの家に戻ったんだ。みんな飲んでて……それから……その後は全然覚えてない」
マイクは自分の体に目を落とした。やはり、つるつるの肌になっている。それからポールに目を戻した。「お前の顔……」
「ひげがなくなってるのは知ってるよ」
「いや、それじゃなくって……。お前の眉毛。それにお前、化粧しているのか?」
ポールはまたも自分の顔に手をやった。その手に明るいピンク色の紅がついているのをマイクは見逃せなかった。「ちくしょう!」 とポールは背中を向けた。「くそっ! ちくしょう! いったい何なんだ! ほんとに!」
「落ち着け」とマイクはポールの肩をつかんだ。「ともかく、落ち着くんだ。絶対、何か説明があるはずだ」
その時、人工的な声が部屋に響いた。「お前たちふたりは、今は、私の性奴隷だということ。それが説明」マイクは素早く声の出所に目をやり、部屋の隅に小さなスピーカーがあるのに気付いた。「それだと、説明が足りないというなら、もっと長い説明をしてあげてもよいだろう。昨夜、お前たちふたりは意識を失うほど泥酔し、みんなでちょっと楽しんだわけだ。私はこの何週間か、新しいプロジェクトの対象を探してきたのだよ。そして、お前たちふたりは、ほぼ完ぺきな候補者だったということだ」
「こ、候補者……いったい、何の話しだ?」 とポールは言葉を詰まらせた。
「分かってると思うが。今は分からないにしても、すぐに分かるだろう。これは言っておくが、逃げようなどしないことだな。逃げようとしても体力を無駄に使うことにしかならない。私は、こういうことをすでに何度もしてきている。逃げようとしても成功した者はいないのだよ。ともあれ、逃げられないとあきらめることだ。叫びたかったら叫んでもいいし、悪態をつきたいなら、どうぞ自由に。ドアや窓を叩いたり、引っかいたりも自由。だが逃れることはできない。お前たちは囚われているのだよ。それを早く理解することだな。諦めるのが早ければ早いほど、早くお前たちの調教に取り掛かることができる」