
66_Wonder woman 「ワンダーウーマン」
「こんなのバカげてる。ほんとに、間抜けすぎるよ」
「いいから黙れって。ブツブツ文句を言うのをやめろよ。すごく似合ってるんだぜ」
「でも、ワンダーウーマンなんかイヤだよ! どうして、フラッシュとかでダメなのかなあ。スーパーマンでもいいし、他にも……」
「お前、そのコスチュームが最高だからだよ。これは何百回も言ったはずだよ、チェイス。勝ちたいんだろ?」
「最高って、どうかなあ。そうかもしれないけど。でも、ボクがワンダーウーマンにならなくたって、ボクたち勝てると思うんだよ。サイボーグになってもいいよ。だったら気にしない。でも、会場をこれを着て歩き回るのだけはイヤなんだ。この……ミニスカートを履いてなんて。そしたら、去年と全く同じことになってしまうよ」
「そして、去年は俺たち1位になったんだよな? お前がスーパーガールにならなかったら、俺たち本当に勝てたと思ってるか? 無理だよ。少なくとも女の子がひとりは加わっていないと、コスプレ・コンテストにはどのチームも勝てない。それに、その女の子は可愛ければ可愛いほど有利なんだ」
「でも、ボクは今日一日中、オタクの群れに追い回されたんだよ! しかも、あいつら、すぐに手を出してボクの体をベタベタ触りまくるようになったんだ。後もうひとりでも、ニキビ顔のオタクがボクのお尻を握ったりしたら、ボクは気が狂っちゃうよ、デレック! ほんとに気が狂うよ!」
「大丈夫だって」
「本物の女の子がチームにいればいいんだけど」
「そうか? コミックブックのコンベンションのために喜んで仮装してくれる女の子、お前、誰か思い当たるやついるのか? いねえだろ? 俺にもいねえよ。だから俺たちにとっては、お前がベストの選択肢なんだよ、チェイス。お前もそれは分かってるだろ?」
「分かったよ! でも、来年は、また男役に戻るからね、いいね?」
「ああ、いいとも。了解。好きな役を言ってくれ。それじゃあ、その可愛いお尻を振って車に乗り込もうぜ。そして、今年もコンテストに優勝するんだ」