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シルクの囁き、ラベンダーの香り 第1章 (2) 

ジャネットは、今でも、セックスが楽しかった頃のことを覚えていた。性的な器官全体を荒波が洗うように、快感と苦痛が混じった興奮を与えられるのを、毎日のように楽しみにしていた日々。だが、それは仕事と家庭が軌道に乗る前の時代だった。

自分でも、セックスに関しては、世界中で最も創造性に溢れた女性ではないのは分かっていたし、多分、すこし、引っ込み思案な方だろうとは思っていた。それでもロジャーは不平を漏らさなかった。それに、ここ2年ほど、ジャネットは、気がつくと、自分で認める以上に、セックスのことについて思いふけっていることが多かった。時々、容姿の素敵な男性を見ると、体全体が少し火照り、顔が熱くなり、心臓がどきどきするのを感じることがあった。ジャネットは、それは多分ホルモンのせいだろうと考えることにしていた。以前、本で、30代の女性はセックスの点で絶頂期にあると読んだことがあった。だが、ここ2年ほど、ロジャーとジャネットは、せいぜい2週間に1度だけで、それすらないこともあったのである。

ジャネットは、寝室でセクシーな衣装を着て性生活に刺激を与えようとしたことがあった。だが、それもうまくはいかなかった。ロマンティックに、ろうそくをともしたディナーを用意したこともあった。それに、突然、休暇をとって驚かせ、ニュー・イングランドの人里はなれた小さな旅宿に逃避旅行をしたこともあった。だがいずれも効果はなかった。今や、そのわけがはっきり分かったのである。ロジャーは若い愛人を作っていたのだ。どうしてそんなことに気づかなかったのだろう。なんてバカだったの。ジャネットは何度も自問した。

このショックから立ち直るのに、1年以上かかった。ようやくにして、娘や友人たちの励ましもあって、ジャネットはゆっくりながらも気落ちした状態から立ち直っていた。実際、男性とのデートも始めたのである。そのデート相手の中に、出会って数ヶ月で結婚を申し込んできた男性がいた。ウェインという名である。

しかし、ジャネットは、まだ結婚に飛びつく心の準備ができていなかった。もう少し辛抱してくれるよう頼み、ウェインの申し出は断ったのだった。もっと時間が必要だと、立ち直る時間、自分を見つけなおし、自分が何を求めているかはっきり自覚するための時間が必要だと、彼に告げた。しかし、実際は、ジャネットにはそれ以上の理由があった。先の性的な憧れの気持ちである。その憧れのため、彼女は、仕事や大半は退屈だった私生活よりももっと意味のあることが人生には存在すると思うようになっていた。

ウェインは良き男性だった。尊敬されている小児科医で、何年も前に妻を癌で失っていた。ウェインの最も良きところは、ジャネットを女王様のように扱ってくれる点だった。デートを始めて数ヵ月後、ジャネットは彼に身を委ね、セックスをした。ウェインは、ベッドでも良き男性だったし、持ち物の使い方もよく心得てはいたが、彼もまたジャネットと同じく、保守的で、変わったことを試みようとはしなかった。特に、オーラル・セックスは拒絶していたのである。ジャネットは、セックスのその方面が欠けていることを残念に思っていた。

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